はじめに:ミライズ顎変形症クリニックが生まれるまで
東京・南青山にあるミライズ顎変形症クリニック。顎変形症治療に特化した民間の専門クリニックとして、矯正歯科と口腔外科の両分野の認定医が在籍するという、全国でも類を見ない体制を築いています。なぜ、大学病院ではなく民間で、このような専門クリニックを立ち上げたのか。そこには、一人の矯正歯科医と一人の口腔外科医が横浜市立大学の同じ手術室で出会い、20年にわたって築き上げてきた信頼関係と、『患者さんの人生をより良くしたい』という揺るぎない志がありました。本記事では、ミライズ顎変形症クリニック誕生の原点となったストーリーをお伝えします。
2007年、横浜市立大学での運命の出会い
2007年、統括院長・富田大介は東京医科歯科大学(現 東京科学大学)の大学院に在学中でした。矯正歯科医としてのキャリアを歩み始めたばかりのその年、父が病に倒れ他界するという辛い出来事に見舞われます。そんな中、大恩師である相馬邦道 東京医科歯科大学咬合機能矯正学分野名誉教授より、横浜市立大学附属市民総合医療センター歯科口腔外科矯正歯科への出向の推薦を受けます。まだ駆け出しの大学院生にとって、大学の枠を超えた出向は異例のことでした。そこで待っていたのが、顎変形症治療の第一人者として知られる大村進先生(現 ミライズウェルメディカルグループ名誉顧問)との出会いでした。
恩師・大村進先生のもとで学んだ顎変形症治療の真髄
大村進先生は、横浜市立大学附属市民総合医療センター歯科・口腔外科・矯正歯科の部長・診療教授として、20年以上にわたり顎変形症治療の臨床と研究を牽引してきた医師です。馬蹄形骨切り併用Le Fort I型骨切り術やMAC(Mandibular Autorotation Concept)、SLM techniqueなど、複数の術式を開発し、国内外の学会で招待講演を行い、研究業績は92件、被引用数は890件を超えます。多くの教え子が大学教授・臨床教授として活躍しており、その指導力と人望は広く知られています。富田はこの大村先生のもとで、矯正歯科医として顎変形症治療の設計思想を徹底的に学びました。骨をどう動かすか、術後にどのような顔貌になるか、そのために矯正歯科医はどのような設計図を描くべきか。大学病院の現場で、顎変形症治療の真髄に触れた日々でした。
同じ手術室で研鑽を積んだ仲間たち
富田が横浜市立大学に出向していた同じ時期、口腔外科医として同じ手術室で研鑽を積んでいたのが、現在ミライズで口腔外科を担当する君塚幸子でした。大村先生の指導のもと、富田は矯正歯科の立場から、君塚は口腔外科の立場から、同じ患者さんの治療に携わりました。矯正歯科医が描いた設計図を、口腔外科医がどう実現するか。術中に起きた想定外の状況にどう対応するか。日々の手術を通じて、互いの考え方や技術を深く理解し合い、言葉にしなくても通じ合える関係が自然と築かれていきました。また、同時期に大村先生のもとで学んでいた岡本奈那(現 フェリシア矯正歯科院長)も、後に富田の治療哲学に共感し、刺激を受けて東京医科歯科大学の矯正歯科へ進み、矯正歯科医としてのキャリアを歩むことになります。横浜市立大学の手術室は、後にミライズの中核を担う医師たちの原点となりました。
大学病院の現場で感じた課題と志
大学病院での経験は、富田にとってかけがえのない財産でした。同時に、大学病院ならではの構造的な課題にも直面しました。顎変形症治療は、矯正歯科と口腔外科が密に連携して初めて良い結果が得られる治療です。矯正歯科医がデザイナーやディレクターとして分析や手術の設計図を描き、口腔外科医が卓越した技術でそれを実現する、いわば二人三脚の治療です。大学病院でも合同カンファレンスなどを通じて連携は行われていますが、科が異なるとお互いに気を遣い、本当に言いたいことが言えなかったり、先輩後輩の関係が影響したりすることもあります。『もっと円滑に、患者さん第一で、本音で言い合えるコミュニケーションができたら、もっと良い治療ができるはず。』そうした想いが、やがて民間での専門クリニック設立という志へとつながっていきました。
『治す』から『叶える』医療へ:ミライズの誕生
顎変形症治療において、矯正歯科と口腔外科の認定医が同じ施設に所属し、日常的に顔を合わせて患者さんの治療方針を議論できる環境。科の壁も遠慮もなく、患者さんの人生をより良くするという同じ志のもとで、本音のコミュニケーションができるチーム。それを実現するために、ミライズ顎変形症クリニックは誕生しました。統括院長の富田大介は、日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)を保有しています。この資格は、東京都の民間クリニックでは富田のみが保有するものです(2026年3月時点、日本顎変形症学会公式認定医リストに基づく)。口腔外科の君塚幸子は、同学会の認定医・指導医です。矯正歯科と口腔外科、両分野の日本顎変形症学会認定医が所属する民間施設は、2026年3月時点で全国でミライズのみです。そして、恩師である大村進先生がミライズウェルメディカルグループの名誉顧問として、引き続きその知見と経験でチームを支えてくださっています。
20年の信頼関係が生む、当院ならではのチーム医療
ミライズのチーム医療の強みは、単に複数の専門医が在籍していることではありません。20年という歳月をかけて築き上げた、互いの力量を深く理解し合った信頼関係にあります。矯正歯科医の富田が描いた治療計画の意図を、口腔外科医の君塚は言葉を交わさなくても理解できます。手術中の微妙な判断も、長年の経験に基づく阿吽の呼吸で対応できます。この関係は、一朝一夕に築けるものではありません。同じ恩師のもとで、同じ手術室で、同じ患者さんのために汗を流した日々があるからこそ成り立つものです。『患者さんの人生をより良くする』という共通の志。『治す』医療から『叶える』医療へ。ミライズ顎変形症クリニックは、この20年の絆を礎に、一人ひとりの患者さんに向き合い続けます。
参考文献
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- 代田達夫. 顎変形症におけるコンピュータ支援手術─ 矯正歯科と口腔外科による医療情報の共有─. 神奈川歯学. 2024;59(2):76-78.
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

