入院準備

顎変形症の手術と禁煙|術前・術後はいつまで?生涯禁煙の考え方

入院準備約7分で読めます

執筆・監修

富田大介(歯科医師)

日本矯正歯科学会認定医・代議員/日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

執筆者

富田大介

日本矯正歯科学会認定医・代議員/日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

参考文献

  • 1. Sørensen LT. Wound healing and infection in surgery: the clinical impact of smoking and smoking cessation: a systematic review and meta-analysis. Arch Surg. 2012;147(4):373-383. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22508785/
  • 2. Kuhlefelt M, et al. Smoking as a significant risk factor for infections after orthognathic surgery. J Oral Maxillofac Surg. 2012;70(7):1643-1647. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21958665/
  • 3. 日本麻酔科学会・Minds. 周術期禁煙プラクティカルガイド. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00684/
  • 4. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 禁煙治療ってどんなもの? https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-06-007.html
  • 5. 日本顎変形症学会. 公式サイト・学術情報
  • 6. 日本口腔外科学会. 公式サイト・学術情報

顎変形症の外科矯正を予定している方へ。術前・術後の禁煙、8週間の位置づけ、生涯禁煙を推奨する理由、紙巻き・加熱式・電子たばこ、禁煙外来の利用を解説します。

1

まず知っておきたいこと:禁煙は手術と回復の条件を整える準備です

顎変形症の外科矯正では、顎の骨を移動・固定した後、口の中の傷が閉じ、骨が安定していく過程を支えることが重要です。喫煙は、一般外科における創傷治癒や手術部位感染のリスク上昇と関連することが報告され、顎矯正手術を対象とした観察研究でも術後感染との関連が報告されています。 ミライズ顎変形症クリニックでは、紙巻きたばこ・加熱式たばこ・電子たばこを含め、少なくとも手術4週間前から、可能であれば8週間前からの禁煙をお願いしています。術後8週間は骨の治癒と経過観察で特に重要な期間ですが、再喫煙を認める目安ではありません。手術後も禁煙を継続し、健康面から生涯にわたる禁煙を推奨します。これは治療結果を保証するものではなく、手術と回復にできるだけ良い条件で臨むための院内安全方針です。禁煙補助薬、手術時期、術後の禁煙期間は自己判断せず、主治医・麻酔科・禁煙外来へご相談ください。

2

なぜ顎変形症の手術で禁煙が重要なのか

外科矯正では、口の中から切開して顎の骨を移動し、プレートやスクリューで固定します。術後の回復には、傷に十分な血流と酸素が届き、感染を防ぎながら骨の治癒が進むことが必要です。たばこの成分や煙への曝露は、血流・酸素供給・呼吸器の状態に影響し得るため、周術期に避けるべき要因の一つとされています。 一般外科を横断した系統的レビューとメタ解析では、喫煙者は非喫煙者と比べ、手術部位感染、創傷治癒の遅れ・創離開、骨癒合不全を含む治癒上の問題が多い傾向を示しました。ただし、これだけで個々の患者さんのリスクや治療結果を予測することはできません。年齢、全身状態、術式、口腔衛生、栄養状態、麻酔評価、術後管理を総合して判断します。 顎矯正手術286例を対象とした後ろ向きコホート研究では、術後感染率は9.1%で、検討された因子の中で喫煙が統計学的に有意な感染リスク因子として報告されました。この研究は一施設の観察研究であり、因果関係や個人の発生確率を決めるものではありません。それでも、長い術前矯正期間を活かして禁煙を支援する重要性を示す知見です。

顎変形症の手術と禁煙|術前・術後はいつまで?生涯禁煙の考え方 - イメージ図
3

当院の術前・術後禁煙方針:8週間は再喫煙の目安ではありません

時期当院からのお願い理由・確認事項
手術日が決まった日可能な限りその日から禁煙を開始手術当日までに整えられる条件が増えます。
手術8週間前禁煙開始の理想的な目安周術期禁煙ガイドでは早期の禁煙支援が重視されています。
手術4週間前当院方針上の最低目安続いている場合は隠さず担当医へ相談してください。安全のため日程調整をご相談することがあります。
手術当日〜退院院内・周術期とも禁煙を継続麻酔・呼吸器管理、傷の治癒に関わるためです。
術後8週間まで骨の治癒と経過観察で特に重要な期間として禁煙を継続術後8週間は再喫煙を認める期限ではありません。術式・経過・担当医の指示を優先します。
術後8週間以降禁煙を継続し、生涯にわたる禁煙を推奨再喫煙を前提にせず、長期の健康管理として禁煙を続けることを勧めます。

当院の一次情報:上記は「ミライズ顎変形症クリニック 手術前禁煙のご案内」(2026年作成)に基づく院内の安全方針です。一般的な目安であり、個別の治療計画や手術可否は診察・検査・麻酔評価を踏まえて決定します。

4

加熱式たばこ・電子たばこなら大丈夫ですか?

当院では、加熱式たばこ・電子たばこも手術前後の禁煙対象として扱います。紙巻きたばこと比べた健康影響や成分は製品によって異なりますが、手術前後の安全管理では「たばこ製品を続けながら手術に臨む」ことを代替策とは考えません。 一方で、ニコチンパッチやニコチンガムなどの禁煙補助薬は、喫煙を継続する場合と同列に扱えません。使用の可否、開始時期、手術前後の調整は、麻酔科・主治医・禁煙外来が個別に判断します。自己判断で始めたり中止したりせず、必ずご相談ください。

顎変形症・外科矯正のご相談はミライズへ

日本顎変形症学会認定医が在籍。Surgery First・Early Surgery・自費外科矯正に対応。

相談を予約
5

禁煙が難しいときは、禁煙外来という選択肢があります

禁煙は意志の強さだけの問題ではなく、ニコチン依存症に対する治療支援が有用な場合があります。厚生労働省 e-ヘルスネットによると、一定の要件を満たす方は、12週間に5回の禁煙治療に健康保険が適用されます。加熱式たばこ使用者も保険診療による禁煙治療の対象として認められています。 禁煙外来では、依存度の確認、呼気一酸化炭素濃度の測定、状況に応じた薬物療法、禁煙継続のための支援が行われます。手術日が決まっている場合は予約枠の確保が必要になることもあるため、禁煙を考え始めた時点で早めにご相談ください。

6

もし吸ってしまったら、隠さず伝えてください

「少しだけなら」「手術直前に止めれば」と考えてしまうことがあるかもしれません。しかし、喫煙状況は麻酔・手術・術後管理を検討するための大切な情報です。吸ってしまった場合でも、責めることはありません。いつ、何を、どの程度使用したかを担当医に伝えてください。必要に応じて、禁煙支援、麻酔科との共有、手術時期の再検討を行います。

手術の準備は、診断、術前矯正、手術、術後矯正、保定まで続く治療プロセスの一部です。詳しい流れは顎変形症の総合ガイド、治療の流れ、手術の安全性、医師紹介でもご案内しています。

7

よくある質問

Q1. 手術の何日前から禁煙すればよいですか?

A. 当院では少なくとも4週間前、可能であれば8週間前からの禁煙をお願いしています。手術日が決まったら、待たずにその日から始めることが現実的です。個別の期限は担当医の指示を優先してください。

Q2. 加熱式たばこや電子たばこなら使えますか?

A. 当院では使用を控えていただきます。製品の種類にかかわらず、手術前後の安全管理上は禁煙の対象です。禁煙補助薬の扱いは別途判断が必要なため、主治医または禁煙外来に相談してください。

Q3. 禁煙できないと手術は受けられませんか?

A. 手術の実施可否は、喫煙状況だけでなく全身状態、検査結果、術式、麻酔評価などを含めて個別に判断します。当院では安全を最優先に、手術4週間前の時点で禁煙が確認できない場合には日程調整をご相談することがあります。まずは状況を正直にお伝えください。

Q4. 術後はいつまで禁煙が必要ですか?

A. 術後8週間は骨の治癒と経過観察で特に重要な期間ですが、8週間が過ぎれば再喫煙してよいという意味ではありません。当院では術後も禁煙を継続し、健康面から生涯にわたる禁煙を推奨しています。骨の治癒や経過には個人差があるため、食事・運動・矯正調整と同様に、診察時の指示を優先してください。

Q5. 家族が吸っていても問題ありませんか?

A. 手術前後は、同居家族にも室内や患者さんの近くでの喫煙を控えていただくようお願いします。受動喫煙を避ける環境づくりは、禁煙継続の支えにもなります。

まとめ:術前から術後、その先も禁煙を続けることを推奨します

禁煙は手術前の追加の宿題ではなく、回復の条件を整え、長期的な健康を考える安全管理の一部です。術後8週間は特に重要な回復期ですが、再喫煙を認める区切りではありません。術後も禁煙を継続し、生涯にわたる禁煙を推奨します。禁煙が難しい場合、すでに使用してしまった場合も、一人で抱え込まず初診相談または手術担当のスタッフへご相談ください。禁煙を始めることで、すべての患者さんに同様の結果を保証するものではありません。個別のリスクと手術の可否は、診察・検査・麻酔評価をもとに判断します。

初診相談受付中

顎変形症・外科矯正のお悩み、専門医に相談してみませんか?

矯正歯科と口腔外科の両分野で日本顎変形症学会認定医が在籍する専門性の高い民間施設。Surgery First・Early Surgery・自費外科矯正に対応しています。

顎変形症に関する初診相談 5,500円(税込・予約制)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の執筆者

富田 大介の顔写真

富田 大介(とみた だいすけ)

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(現・東京科学大学)咬合機能矯正学分野修了。ミライズウェルメディカルグループ代表・統括院長として外科矯正の矯正歯科側治療計画を専門とし、Surgery First・Early Surgeryの豊富な臨床経験を有する。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。口腔外科専門医との23年間に及ぶ連携歴に基づく精密な治療計画の立案と、デジタルワークフローシステムの構築を主導。

詳細プロフィールを見る →

Contact

まずは初診相談で、あなたの「次の一歩」を確認しませんか?

矯正歯科と口腔外科が連携し、検査結果に基づいて治療計画をご説明します。

顎変形症に関する初診相談|相談料 5,500円(税込)・予約制(検査・治療費は別途)