治療法

Surgery Firstの適応と非適応を症例で解説

治療法約10分で読めます

執筆者

富田大介

査読・監修

君塚幸子

日本口腔外科学会認定医・指導医 / 日本顎変形症学会認定医

参考文献

  • 1. Thaynan Maximiano Borges, Izabella Sol, Cristovão Marcondes de Castro Rodrigues, Felipe Gomes Gonçalves Peres Lima, Claudia Jordão Silva, Lair Mambrini Furtado. Surgery First Approach in Orthognathic Surgery - Considerations and Clinical Case Report. Ann Maxillofac Surg. 2021;11(2):349-351. DOI: 10.4103/ams.ams_8_21
  • 2. Jong-Woo Choi, Jang-Yeol Lee. Current concept of the surgery-first orthognathic approach. Arch Plast Surg. 2021;48(2):199-207. DOI: 10.5999/aps.2020.01305
  • 3. Narayan H Gandedkar, Chai Kiat Chng, Winston Tan. Surgery-first orthognathic approach case series: Salient features and guidelines. J Orthod Sci. 2016;5(1):35-42. DOI: 10.4103/2278-0203.176657
  • 4. C.S. Huang, Y.-R. Chen. Orthodontic principles and guidelines for the surgery-first approach to orthognathic surgery. International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2015;44(12):1457-1462. DOI: 10.1016/j.ijom.2015.05.023
  • 5. Woo Shik Jeong, Jong Woo Choi, Do Yeon Kim, Jang Yeol Lee, Soon Man Kwon. Can a surgery-first orthognathic approach reduce the total treatment time?. International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2017;46(4):473-482. DOI: 10.1016/j.ijom.2016.12.006

Surgery First(サージェリーファースト)は術前矯正を省略し、治療期間を大幅に短縮できる画期的な外科矯正アプローチです。すべての症例に適応できるわけではなく、骨格的なズレの程度や歯の傾斜など、厳密な適応基準が存在します。ミライズ顎変形症クリニックでは、矯正歯科と口腔外科の専門医が連携し、安全かつ確実な治療計画を立案しています。

Surgery First(サージェリーファースト)とは

顎変形症の一般的な治療プロセスでは、まず歯並びを整える「術前矯正」を1〜2年行い、その後に顎の骨を切る「骨切り術(外科矯正)」を実施し、最後に「術後矯正」で微調整を行います。これに対し、Surgery First(サージェリーファースト)は、術前矯正を省略して最初に外科手術を行い、その後に矯正治療を行うアプローチです [1] [2]。 この治療法の最大のメリットは、治療期間の大幅な短縮です。従来の治療法ではトータルで2〜3年かかることが多いですが、Surgery Firstでは1年〜1年半程度で治療が完了するケースが多く見られます [5]。また、手術を先に行うことで、顔貌の改善が早期に得られるため、患者さんの心理的負担を軽減できるという利点もあります。 しかし、この画期的な治療法はすべての患者さんに適用できるわけではありません。術前矯正を省略するため、手術直後の噛み合わせ(咬合)が不安定になりやすく、機能的な咬合を最終的に確立できるかどうかを術前に正確に予測する高度な診断力が求められます [3] [4]。

Surgery Firstの適応症例

Surgery Firstが適応となるのは、主に以下のような条件を満たす症例です。術後の咬合安定性が確保できることが最も重要な基準となります。

  1. 軽度から中等度の叢生(歯のガタツキ) 歯の重なりやガタツキが少なく、手術直後にある程度の噛み合わせが得られるケースが適応となります。重度の叢生がある場合は、術前矯正で歯列を整える必要があります。
  2. 抜歯を伴わない、または抜歯スペースの閉鎖が容易なケース 矯正治療において小臼歯などの抜歯が必要な場合、そのスペースを閉鎖するのに時間がかかります。Surgery Firstでは、非抜歯で治療可能なケースや、抜歯スペースの閉鎖が術後矯正のみで確実に行えるケースが適応となります。
  3. 歯の代償性傾斜が少ないケース 顎の骨格的なズレに対して、歯がそれを補うように傾斜している状態を「代償性傾斜」と呼びます。この傾斜が強い場合、手術で顎の骨を正しい位置に移動させると、歯同士が強く干渉してしまい、適切な噛み合わせが得られません。そのため、代償性傾斜が少ない、あるいは術後矯正で十分に修正可能な範囲であることが条件となります。
  4. 術後の咬合が3点以上で安定するケース 手術直後に、前歯と左右の奥歯の最低3点で噛み合わせが安定することが、Surgery Firstを成功させるための重要な要件とされています [3]。

Surgery Firstの非適応症例

一方で、以下のようなケースはSurgery Firstの非適応(従来通りの術前矯正が必要)と判断されることが多くなります。

  • 重度の叢生(乱杭歯)がある場合
  • 抜歯スペースの確保と閉鎖に長期間を要する場合
  • 重度の代償性傾斜があり、術後の咬合干渉が避けられない場合
  • 顎関節症の症状が強く、顎位が不安定な場合
  • 著しい開咬(オープンバイト)や非対称があり、術後の咬合安定が見込めない場合

これらの非適応症例に対して無理にSurgery Firstを行うと、術後の噛み合わせが安定せず、後戻り(顎の骨が元の位置に戻ろうとする現象)のリスクが高まったり、最終的な治療期間が逆に長くなってしまったりする可能性があります。患者さん第一の視点に立てば、機能的な咬合の獲得を最優先とし、安全で確実な従来法を選択することが重要です。

Surgery Firstと従来法の比較表

比較項目Surgery First(サージェリーファースト)従来法(術前矯正あり)
治療期間約1年〜1年半(大幅に短縮)約2年〜3年
顔貌の改善治療初期(手術直後)に改善治療中期(術前矯正後)に改善
術前矯正省略(またはごく短期間)1年〜2年程度必要
適応症例軽度〜中等度の叢生、代償性傾斜が少ない等、限定的ほぼすべての顎変形症に適応可能
術後の咬合一時的に不安定になるリスクあり術前矯正で整えているため比較的安定
求められる技術術後の咬合変化を予測する極めて高度な診断力標準的かつ確実なステップを踏む技術

ミライズ顎変形症クリニックのSurgery First治療実績

ミライズ顎変形症クリニックでは、患者さんの負担軽減と機能的な咬合の獲得を両立させるため、厳格な適応基準のもとでSurgery Firstを実施しています。

当院の顎変形症治療における独自データとして、これまでに症例数143例の手術実績があり、その中で重篤合併症は0件を維持しています。また、低侵襲な手術手技と徹底した術後管理により、社会復帰63%以上が1週間未満という早期回復を実現しており、患者さんからの満足度も8.9/10と高い評価をいただいております。

Surgery Firstにおいても、これらの実績に裏打ちされた安全な医療を提供しています。当院は、矯正歯科と口腔外科の両方で日本顎変形症学会認定医を擁する全国唯一の民間施設です。統括院長である私、富田大介は日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)であり、東京都の民間クリニックでは唯一の存在です。また、名誉顧問・医学博士の大村進、および日本口腔外科学会認定医・指導医である君塚幸子と緊密に連携し、外科と矯正の双方向から綿密なシミュレーションを行うことで、Surgery Firstの適応を正確に見極めています。

Surgery Firstを成功に導くためのポイント

Surgery Firstを成功させ、機能的で美しい口元を獲得するためには、以下のポイントが重要です。

  1. 3Dシミュレーションによる精密な術前計画 CTデータや口腔内スキャナーを用いた3Dシミュレーションは不可欠です。骨の移動量だけでなく、術後の歯の移動までをコンピューター上で正確に予測し、最終的な咬合状態をシミュレーションします。
  2. 外科医と矯正医の緊密な連携 Surgery Firstでは、手術を担当する口腔外科医と、術後矯正を担当する矯正歯科医の連携が従来法以上に重要になります。手術の限界と矯正治療の限界を互いに理解し、綿密な治療計画を共有できるチーム医療体制が必須です。
  3. 患者さんの理解と協力 術前矯正を省略するため、手術直後は噛み合わせが不安定になり、食事がしづらい期間が生じます。また、術後矯正では顎間ゴム(エラスティック)を患者さん自身で装着していただくなど、積極的な協力が不可欠です。リスクや副作用も含め、治療プロセスを十分に理解していただくことが成功の鍵となります。

まとめ:専門医による正確な診断が不可欠

Surgery Firstは、治療期間短縮と早期の顔貌改善という大きな魅力を持つ治療法ですが、適応症例が限られており、高度な診断力と技術が要求されます。ご自身の状態がSurgery Firstの適応となるかどうかは、専門医による精密検査と診断を受けなければわかりません。

ミライズ顎変形症クリニックでは、患者さん一人ひとりの骨格や歯並びの状態を詳細に分析し、最も安全で確実な治療法をご提案いたします。Surgery Firstをご希望の方も、まずは一度ご相談ください。

著者バイライン

  • 著者:富田大介(ミライズ顎変形症クリニック 統括院長・日本顎変形症学会認定医(矯正歯科))
  • 査読者:君塚幸子(日本口腔外科学会認定医・指導医)
  • 公開日:2026-05-28
  • 更新日:2026-05-28

参考文献

  1. Thaynan Maximiano Borges, Izabella Sol, Cristovão Marcondes de Castro Rodrigues, Felipe Gomes Gonçalves Peres Lima, Claudia Jordão Silva, Lair Mambrini Furtado. Surgery First Approach in Orthognathic Surgery - Considerations and Clinical Case Report. Ann Maxillofac Surg. 2021;11(2):349-351. DOI: 10.4103/ams.ams_8_21
  2. Jong-Woo Choi, Jang-Yeol Lee. Current concept of the surgery-first orthognathic approach. Arch Plast Surg. 2021;48(2):199-207. DOI: 10.5999/aps.2020.01305
  3. Narayan H Gandedkar, Chai Kiat Chng, Winston Tan. Surgery-first orthognathic approach case series: Salient features and guidelines. J Orthod Sci. 2016;5(1):35-42. DOI: 10.4103/2278-0203.176657
  4. C.S. Huang, Y.-R. Chen. Orthodontic principles and guidelines for the surgery-first approach to orthognathic surgery. International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2015;44(12):1457-1462. DOI: 10.1016/j.ijom.2015.05.023
  5. Woo Shik Jeong, Jong Woo Choi, Do Yeon Kim, Jang Yeol Lee, Soon Man Kwon. Can a surgery-first orthognathic approach reduce the total treatment time?. International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2017;46(4):473-482. DOI: 10.1016/j.ijom.2016.12.006

関連FAQ

Q. Surgery Firstは誰でも受けられますか? A. いいえ、すべての方に適応できるわけではありません。歯のガタツキ(叢生)が軽度であることや、術後の噛み合わせが一定以上安定することなど、厳密な条件を満たす必要があります。重度の叢生がある場合などは、従来通りの術前矯正が必要となります。

Q. Surgery Firstの治療期間はどのくらいですか? A. 症例にもよりますが、一般的には1年〜1年半程度で治療が完了することが多いです。従来の術前矯正を行う方法(2〜3年)と比較して、大幅に治療期間を短縮できる可能性があります。

Q. 手術直後の噛み合わせはどうなりますか? A. 術前矯正を行わずに手術をするため、手術直後は噛み合わせが不安定になります。そのため、術後しばらくは食事がしづらい場合がありますが、その後の術後矯正でしっかりと機能的な噛み合わせを作っていきます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の執筆者

富田 大介

富田 大介(とみた だいすけ)

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(現・東京科学大学)咬合機能矯正学分野修了。ミライズウェルメディカルグループ代表・統括院長として外科矯正の矯正歯科側治療計画を専門とし、Surgery First・Early Surgeryの豊富な臨床経験を有する。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。口腔外科専門医との23年間に及ぶ連携歴に基づく精密な治療計画の立案と、デジタルワークフローシステムの構築を主導。

詳細プロフィールを見る →

この記事の査読者

君塚 幸子

君塚 幸子

口腔外科医 / 日本顎変形症学会認定医・指導医

日本口腔外科学会認定医・専門医・指導医日本顎変形症学会認定医(口腔外科)

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