学会報告

サージェリーファースト矯正の新展開:ルフォーI型骨切り術との組み合わせ戦略

学会報告約4分で読めます

執筆者

君塚幸子

査読・監修

富田大介

日本顎変形症学会認定医・矯正歯科

参考文献

  • 1. Kimitsuka S, Tomita D, Omura S. Surgery-first approach combined with Le Fort I osteotomy: Clinical outcomes in 47 cases of anterior open bite and maxillary protrusion. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2025;83(5):1234-1242.
  • 2. Sugawara Y, Yamamoto K, Nakajima T. Efficacy of surgery-first orthognathic approach: A systematic review and meta-analysis. International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2024;53(4):512-521.
  • 3. Omura S, Tomita D. Digital surgical planning for combined orthognathic procedures: Precision and predictability. Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology and Oral Radiology. 2024;138(2):145-153.

サージェリーファースト矯正(手術を先行させる治療法)は、従来の矯正先行法と比べて治療期間を大幅に短縮できる革新的なアプローチです。特に上顎前突症(出っ歯)の治療において、ルフォーI型骨切り術との組み合わせが高い有効性を示しています。当院の臨床経験に基づき、その実践的な応用方法をご紹介します。

サージェリーファースト矯正とは:従来法との違い

顎変形症の治療には、大きく分けて2つのアプローチがあります。従来法(矯正先行法)では、1〜2年の矯正治療で歯を並べ、その後数時間の手術で顎の骨を移動させ、最後に6ヶ月〜1年の術後矯正調整を行い、合計2.5〜4年の治療期間が必要です。一方、サージェリーファースト矯正では、最初に数時間の手術で顎の骨を移動させ、その後3〜6ヶ月の矯正調整を行うだけで、合計4〜9ヶ月で治療が完了します。サージェリーファースト矯正の最大のメリットは、治療期間を従来法の1/3〜1/5に短縮できることです。特に、上顎前突症(出っ歯)や下顎前突症(受け口)など、骨格的な問題が主要な患者さんにとって、この方法は革新的な選択肢となります。

ルフォーI型骨切り術との組み合わせ戦略

ルフォーI型骨切り術は、上顎の骨を水平方向に分割し、上下方向や前後方向に移動させる手術です。特に上顎前突症の治療において、サージェリーファースト矯正と組み合わせることで、複数の利点が生まれます。第一に、手術直後から患者さんは改善された咬合を実感でき、これが患者さんのモチベーション向上につながり、術後の矯正治療への協力度が高まります。第二に、従来法では術前の矯正で歯を理想的な位置に並べる必要がありますが、サージェリーファースト法では、手術直後の歯は必ずしも完全に並んでいません。しかし、骨が正しい位置に移動することで、術後の矯正治療が格段に容易になり、期間が大幅に短縮されます。第三に、ルフォーI型骨切り術は、下顎骨切り術(SSRO)と比べて神経損傷のリスクが低いため、サージェリーファースト法に適した術式です。

当院の臨床実績:47症例の成功事例

当院では、2023年から2025年にかけて、サージェリーファースト矯正とルフォーI型骨切り術を組み合わせた治療を47例に実施いたしました。平均治療期間は5.8ヶ月で、従来法比で79%短縮されています。患者満足度は9.1/10、術後の神経麻痺発生率は0%、重篤合併症は0件、社会復帰期間は平均3日という優れた成績を達成しています。これらの実績は、デジタル手術計画と低侵襲手術技術の組み合わせにより、初めて実現可能になったものです。症例として、30代女性で上顎前突症と開咬を有する患者さんは、従来法では3年の予想治療期間が、サージェリーファースト法では6ヶ月で完了し、患者さんから「こんなに早く治るとは思いませんでした。仕事も休みすぎず、生活への影響が最小限で済みました。」というお声をいただきました。

サージェリーファースト矯正の適応症と非適応症

サージェリーファースト矯正は、すべての患者さんに適しているわけではありません。適切な患者選択が、治療の成功を左右する重要な要因です。適応症としては、骨格的な問題が主要な原因である患者さん、上顎前突症や下顎前突症、開咬(前歯が開いている)、治療期間の短縮を強く希望される患者さん、十分な骨量がある患者さんが挙げられます。一方、非適応症としては、歯列の乱れが著しく矯正治療が不可欠な患者さん、骨量が不足している患者さん、全身疾患により手術リスクが高い患者さん、心理的に手術を受ける準備ができていない患者さんが挙げられます。当院では、初診相談の段階で、患者さんの骨格的特徴、歯列の状態、心理的準備度などを総合的に評価し、最適な治療法をご提案いたします。

今後の展開と医学的意義

サージェリーファースト矯正は、顎変形症治療の新しいパラダイムシフトを象徴しています。従来の「矯正治療→手術」という固定的な流れから、患者さんの個別の状態に応じて最適な治療順序を選択する時代へと移行しているのです。このアプローチにより、患者さんのQOL向上と治療期間短縮が実現され、多くの患者さんが早期に新しい人生をスタートさせることができるようになります。当院は、今後も学会と連携し、サージェリーファースト矯正のプロトコル開発と臨床実績の蓄積に注力してまいります。患者さん第一の視点に立ち、最新の医学知見と技術を駆使して、最良の治療を提供し続けることが、私たちの使命です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の執筆者

君塚 幸子

君塚 幸子(きみづか さちこ)

口腔外科医 / 日本顎変形症学会認定医・指導医

日本口腔外科学会認定医・専門医・指導医日本顎変形症学会認定医(口腔外科)

東京医科歯科大学歯学部卒業。同大学院口腔外科学分野修了。日本口腔外科学会認定医・専門医・指導医、日本顎変形症学会認定医(口腔外科)。顎矯正手術(ルフォーI型骨切り術・SSRO・IVRO・オトガイ形成術)を専門とし、低侵襲手術と早期社会復帰を追求。富田統括院長との20年以上の連携実績を持つ。

詳細プロフィールを見る →

この記事の査読者

富田 大介

富田 大介

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

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