患者体験

食事再開スケジュールと栄養

患者体験約9分で読めます

執筆者

富田大介

査読・監修

君塚幸子

日本口腔外科学会認定医・指導医 / 日本顎変形症学会認定医

参考文献

  • 1. Ruslin M, Dekker H, Tuinzing DB, Forouzanfar T. Assessing the need for a protocol in monitoring weight loss and nutritional status in orthognathic surgery based on patients experiences. J Clin Exp Dent. 2017;9(2):e272-e275. DOI: 10.4317/jced.53354
  • 2. Ooi K, Inoue N, Matsushita K, Yamaguchi HO, Mikoya T, Kawashiri S, Tei K. Factors related to patients' nutritional state after orthognathic surgery. Oral Maxillofac Surg. 2019;23(4):481-486. DOI: 10.1007/s10006-019-00801-1
  • 3. 中野はるひ, 小椋幹記, 松本有史, 古川雅英, 中島康経, 大田奈央. 顎矯正手術直後の経口的食事・栄養摂取状況の調査. 日本顎変形症学会雑誌. 2019;29(4):263-268. DOI: 10.5927/jjjd.29.263
  • 4. 小城明子, 竹内由里, 中久木康一, 黒原一人. 顎変形症患者における顎矯正手術および顎間固定施行後の咬合力と食物・栄養摂取状況. 日本顎変形症学会雑誌. 2016;26(1):9-17. DOI: 10.5927/jjjd.26.9
  • 5. Ishikawa S, Matsumura H, Tomitsuka S, Yusa K, Sato Y, Iino M. Comparison of Complications With Semisolid Versus Liquid Diet Via Nasogastric Feeding Tube After Orthognathic Surgery. J Oral Maxillofac Surg. 2019;77(2):410.e1-410.e9. DOI: 10.1016/j.joms.2018.10.012

顎変形症の術後は、流動食から始まり、ミキサー食、軟食へと段階的に食事形態を移行します。回復期における適切な栄養摂取、特にタンパク質の確保は、創傷治癒と体重減少の予防に不可欠です。開口訓練の進捗に合わせて食事内容を調整し、機能的な咬合の獲得を目指すことが重要です。

術後の食事形態の段階的移行

顎変形症の術後は、骨の治癒と噛み合わせの安定を図るため、食事の形態を慎重に段階アップしていく必要があります。手術直後は顎を動かすことが制限されるため、噛まずに飲み込める食事が中心となります。患者さんにとっては、これまで当たり前のように行っていた「噛んで食べる」という行為が一時的にできなくなるため、精神的なストレスを感じることも少なくありません。しかし、この期間は機能的な咬合を獲得するための重要な準備期間でもあります。

術後の食事再開スケジュールは、患者さんの回復状況や手術の範囲によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

術後期間食事形態特徴と注意点
術後1〜3日流動食具材のないスープ、重湯、果汁など。噛む必要がなく、飲み込みやすい液体状の食事です。消化器官への負担を最小限に抑えます。
術後4日〜2週ミキサー食おかゆ、ペースト状のおかずなど。舌でつぶせる程度の柔らかさで、栄養価を高め始めます。食材の風味を感じやすくなります。
術後3〜6週軟食柔らかく煮込んだうどん、豆腐、白身魚など。少しずつ顎を動かす練習を兼ねて摂取します。噛む感覚を取り戻す第一歩です。
術後2ヶ月以降普通食骨の治癒状況を確認しながら、徐々に通常の食事へと戻していきます。硬いものは避け、無理のない範囲で食事を楽しみます。

このスケジュールはあくまで目安であり、実際の移行時期は担当医の指示に従うことが重要です。無理に硬いものを食べると、固定した骨に負担がかかり、治癒を遅らせるリスクや、顎関節の痛みなどの副作用が生じる可能性があります。焦らず、ご自身のペースで段階を踏んでいくことが、最終的な治療の成功につながります。また、食事の際は、一口の量を少なくし、ゆっくりと時間をかけて摂取することが推奨されます。これにより、消化不良を防ぎ、胃腸への負担を軽減することができます。

回復を支える栄養管理の重要性

顎変形症の術後は、食事形態の制限により、必要な栄養素が不足しがちです。特に、創傷治癒を促進し、筋肉の減少を防ぐためには、タンパク質の積極的な摂取が不可欠です。タンパク質は、細胞の修復や免疫力の維持に直結する重要な栄養素であり、術後の回復スピードを大きく左右します。

流動食やミキサー食の段階では、水分が多くなるため、食事の全体量が減少しやすくなります。その結果、摂取カロリーが不足し、体重の減少が見られることが少なくありません。体重の過度な減少は、体力や免疫力の低下を招き、感染症のリスクを高めたり、回復を遅らせたりする要因となります。そのため、少量でも高カロリー・高タンパクな食事を心がけることが大切です。

例えば、市販のプロテイン飲料や栄養補助食品を上手に活用し、不足しがちな栄養素を補う工夫が求められます。また、ビタミンやミネラルも組織の修復に重要な役割を果たすため、野菜や果物をミキサーにかけて摂取するなど、バランスの取れた栄養摂取を意識しましょう。食事の準備が負担になる場合は、市販の介護食やベビーフードを取り入れることも一つの有効な手段です。さらに、食事の温度にも注意が必要です。極端に熱いものや冷たいものは、手術部位に刺激を与える可能性があるため、人肌程度の温度に調整して摂取することが望ましいです。

開口訓練と食事の連動

術後の食事をスムーズに進めるためには、開口訓練が重要な役割を果たします。手術によって一時的に制限された顎の動きを回復させるため、適切な時期から開口訓練を開始します。開口訓練は、単に口を大きく開けることだけが目的ではなく、顎の筋肉の柔軟性を取り戻し、正しい噛み合わせの感覚を脳に再学習させるための重要なリハビリテーションです。

開口訓練の進捗に合わせて、口を開けられる幅が広がり、噛む力も徐々に回復していきます。この機能的な咬合の回復が、食事形態を軟食から普通食へとステップアップさせるための基盤となります。例えば、指が縦に2本入るようになれば、少し厚みのある軟食に挑戦できるようになります。開口訓練と食事のステップアップは密接に連動しており、両者をバランスよく進めることが重要です。

ただし、開口訓練は自己判断で行わず、必ず専門医や理学療法士の指導のもと、正しい方法と頻度で行うことが重要です。無理な訓練は顎関節に過度な負担をかける可能性があり、かえって回復を遅らせる原因となります。痛みのない範囲で、毎日少しずつ継続することが、確実な機能回復への近道です。また、食事中に痛みや違和感を感じた場合は、無理をせずに食事形態を一段階戻すなどの柔軟な対応も必要です。

ミライズ顎変形症クリニックのサポート体制

当院では、患者さんが安心して術後の回復期を過ごせるよう、包括的なサポート体制を整えています。これまでに143例の顎変形症手術を手がけ、重篤な合併症は0件という実績があります。これは、術前の綿密なシミュレーションと、高度な外科技術、そして術後の徹底した管理体制の賜物です。 また、当院の患者さんの63%以上が術後1週間未満で社会復帰を果たしており、術後の満足度調査では10点満点中8.9点という高い評価をいただいております。これは、手術の正確性だけでなく、術後の栄養管理や開口訓練を含めたきめ細やかなフォローアップの結果であると考えています。患者さん一人ひとりのライフスタイルや回復状況に合わせた、オーダーメイドのサポートを提供しています。 ミライズ顎変形症クリニックは、矯正歯科と口腔外科の両方で日本顎変形症学会認定医を擁する全国唯一の民間施設です。私、富田大介は東京都の民間クリニックで唯一の日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)であり、口腔外科の君塚幸子(日本口腔外科学会認定医・指導医)と連携し、機能的な咬合の獲得に向けた最適な治療を提供しています。さらに、大村進(名誉顧問・医学博士)の指導のもと、常に最新の知見を取り入れた安全で質の高い医療を追求しています。

まとめ

顎変形症の術後の食事は、流動食から始まり、段階的に普通食へと移行していきます。この過程での適切な栄養管理と開口訓練は、スムーズな回復と機能的な咬合の獲得に不可欠です。患者さん一人ひとりの状態に合わせた無理のないペースで進めることが大切です。当院では、専門医によるチーム医療で、患者さんの術後の回復を全力でサポートいたします。

著者情報

  • 執筆:富田大介(ミライズ顎変形症クリニック 統括院長 / 日本顎変形症学会認定医・矯正歯科)
  • 査読:君塚幸子(日本口腔外科学会認定医・指導医)
  • 公開日:2026年09月03日
  • 更新日:2026年09月03日

参考文献

  1. Ruslin M, Dekker H, Tuinzing DB, Forouzanfar T. Assessing the need for a protocol in monitoring weight loss and nutritional status in orthognathic surgery based on patients experiences. J Clin Exp Dent. 2017;9(2):e272-e275. DOI: 10.4317/jced.53354
  2. Ooi K, Inoue N, Matsushita K, Yamaguchi HO, Mikoya T, Kawashiri S, Tei K. Factors related to patients' nutritional state after orthognathic surgery. Oral Maxillofac Surg. 2019;23(4):481-486. DOI: 10.1007/s10006-019-00801-1
  3. 中野はるひ, 小椋幹記, 松本有史, 古川雅英, 中島康経, 大田奈央. 顎矯正手術直後の経口的食事・栄養摂取状況の調査. 日本顎変形症学会雑誌. 2019;29(4):263-268. DOI: 10.5927/jjjd.29.263
  4. 小城明子, 竹内由里, 中久木康一, 黒原一人. 顎変形症患者における顎矯正手術および顎間固定施行後の咬合力と食物・栄養摂取状況. 日本顎変形症学会雑誌. 2016;26(1):9-17. DOI: 10.5927/jjjd.26.9
  5. Ishikawa S, Matsumura H, Tomitsuka S, Yusa K, Sato Y, Iino M. Comparison of Complications With Semisolid Versus Liquid Diet Via Nasogastric Feeding Tube After Orthognathic Surgery. J Oral Maxillofac Surg. 2019;77(2):410.e1-410.e9. DOI: 10.1016/j.joms.2018.10.012

関連FAQ

Q. 術後の流動食はいつまで続きますか? A. 患者さんの状態によりますが、一般的には術後1〜3日程度です。その後、徐々にミキサー食へと移行していきます。焦らず、担当医の指示に従って進めてください。

Q. 術後に体重が減ることはありますか? A. 食事形態の制限により摂取カロリーが減少しやすいため、一時的な体重減少が見られることがあります。栄養補助食品などを活用し、必要な栄養素を補うことが重要です。

Q. 開口訓練はいつから始めればよいですか? A. 担当医の指示に従い、適切な時期から開始します。自己判断で行わず、必ず専門家の指導のもとで進めてください。無理のない範囲で継続することが大切です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の執筆者

富田 大介

富田 大介(とみた だいすけ)

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(現・東京科学大学)咬合機能矯正学分野修了。ミライズウェルメディカルグループ代表・統括院長として外科矯正の矯正歯科側治療計画を専門とし、Surgery First・Early Surgeryの豊富な臨床経験を有する。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。口腔外科専門医との23年間に及ぶ連携歴に基づく精密な治療計画の立案と、デジタルワークフローシステムの構築を主導。

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この記事の査読者

君塚 幸子

君塚 幸子

口腔外科医 / 日本顎変形症学会認定医・指導医

日本口腔外科学会認定医・専門医・指導医日本顎変形症学会認定医(口腔外科)

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