基礎知識

小児の顎変形症|成長期の治療タイミング

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査読・監修

富田大介

監修医情報

富田大介

日本矯正歯科学会認定医・代議員

参考文献

  • 1. Proffit WR, et al. Contemporary Orthodontics. 6th ed. Elsevier. 2019.
  • 2. Baccetti T, et al. The Cervical Vertebral Maturation (CVM) method for the assessment of optimal treatment timing. Semin Orthod. 2005;11(3):119-129.
  • 3. Ngan P, et al. Evolution of Class III treatment in orthodontics. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2015;148(1):22-36.
  • 4. 日本顎変形症学会. 顎変形症診療ガイドライン. 2023.

小児・成長期の顎変形症について、治療タイミングと経過観察の重要性を解説します。

小児の顎変形症とは?成長期に知っておきたい基礎知識

顎変形症(がくへんけいしょう)とは、上顎と下顎の大きさや形、位置関係に異常が生じ、顔の変形や噛み合わせの問題(咬合不全)を引き起こす状態を指します。大人だけでなく、成長期にある小児にも見られる症状です。小児の顎変形症は、大人の場合と異なり、顎骨がまだ成長過程にあるという大きな特徴があります。このため、成長を利用した早期の矯正治療によって、将来的な外科手術(骨切り手術)を回避できる可能性や、手術が必要な場合でもその負担を軽減できる可能性があります。主な症状には、下顎が突き出た「下顎前突(受け口)」、上顎が突き出た「上顎前突(出っ歯)」、顔が左右非対称になる「顔面非対称」などがあります。これらの症状は、見た目の問題だけでなく、咀嚼(そしゃく)機能や発音、顎関節への負担、さらには心理的なコンプレックスにも繋がることがあるため、適切な時期に専門家へ相談することが重要です。

なぜ?小児の顎変形症の主な原因

小児の顎変形症の原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。最も大きな要因の一つは遺伝です。ご両親や親族に顎変形症の方がいる場合、お子様にもその傾向が見られることがあります。しかし、遺伝だけでなく、後天的な要因も大きく影響します。例えば、指しゃぶりや舌を突き出す癖、口呼吸(鼻炎やアデノイドなどが原因で鼻呼吸がしにくい場合も含む)といった口腔習癖(こうくうしゅうへき)は、長期間続くと顎の正常な成長を妨げ、不正咬合や顎の変形を誘発することがあります。また、現代の食生活の変化による軟食化で、よく噛む機会が減ったことも、顎の発育不全の一因と考えられています。これらの原因を早期に発見し、生活習慣の改善や癖の除去に取り組むことも、顎変形症の予防や悪化を防ぐ上で非常に大切になります。

成長期における治療の重要性とタイミング

小児の顎変形症治療において、最も重要なのが治療を開始する「タイミング」です。顎の骨は成長段階にあるため、この時期に適切な治療介入を行うことで、成長を良い方向にコントロール(成長誘導)することが可能です。一般的に、反対咬合(受け口)や顎のズレが見られる場合、7〜8歳頃に一度、矯正歯科の専門医に相談することが推奨されます。この時期は、永久歯への生え変わりや、第二次性徴期前の成長のピークを迎える前段階にあたり、比較的簡単な装置で下顎の過成長を抑制したり、上顎の成長を促進したりする治療(1期治療)の効果が期待しやすいからです。適切なタイミングで治療を開始することで、将来的に必要となるかもしれない本格的な矯正治療(2期治療)や外科矯正の負担を軽減し、非抜歯で治療できる可能性も高まります。お子様の健やかな成長のためにも、気になる兆候があれば早めに専門医の診断を受けることが賢明です。

小児の顎変形症に対する矯正歯科治療

成長期のお子様に対する顎変形症の治療は、まず顎の成長をコントロールする矯正治療から始めるのが一般的です。これを「咬合育成治療」または「1期治療」と呼びます。この段階では、取り外し可能なプレート型の装置(床矯正装置)や、頭にかぶるタイプの装置(ヘッドギア、上顎前方牽引装置など)を用いて、顎の成長を望ましい方向へ誘導します。例えば、上顎の成長が不十分な受け口のケースでは、上顎骨を前方に成長させる装置を使ったり、逆に下顎の成長が旺盛な場合は、その成長を抑制する装置を用いたりします。この治療の目的は、あくまで骨格的な問題の悪化を防ぎ、永久歯が正しく生え揃うための土台を整えることです。治療期間は症状や個人差によりますが、数年間にわたることが多く、この1期治療だけで問題が改善することも少なくありません。

外科矯正(骨切り手術)が必要になるケースとは?

1期治療で顎の成長をコントロールしても、骨格的なズレが大きく、噛み合わせの改善が困難な場合は、外科矯正治療が適応となります。これは、顎の骨を切って移動させる「骨切り手術」と、歯並びを整える「歯列矯正」を組み合わせた治療法です。小児の場合、顎の成長が完了するのを待ってから手術を行うのが原則で、一般的には女子で16歳以降、男子で18歳以降が目安となります。ただし、重度の顔面非対称など、早期の手術介入が望ましいと判断されるケースもあります。外科矯正は、顎変形症と診断されれば健康保険が適用される治療です。東京・南青山のミライズ顎変形症クリニックのように、専門性の高い医療機関では、患者様の負担を最小限に抑えるための様々な工夫が行われています。

ミライズクリニックの先進的アプローチ「サージェリーファースト」

従来の外科矯正では、手術前に1〜2年かけて歯列矯正を行い、手術後に再度矯正するという流れが一般的でした。しかし、この方法では治療期間が長引くという課題がありました。そこで注目されているのが、手術を先に行う「サージェリーファースト」や「アーリーサージェリー」というアプローチです。ミライズ顎変形症クリニックは、この先進的な治療法に積極的に取り組む数少ない専門クリニックの一つです。この方法では、最初に骨切り手術で顎の骨格的な問題を解決し、その後、歯列矯正で噛み合わせを仕上げていきます。術前の矯正期間が不要になるため、治療期間全体を大幅に短縮でき、患者様の身体的・精神的負担を軽減できる大きなメリットがあります。同クリニックでは、Stryker Sonopet iQの使用や低血圧麻酔により出血量を抑え、1泊2日での退院を実現するなど、低侵襲な手術を徹底しています。

顎変形症治療の費用について(保険適用と自費診療)

顎変形症の治療費は、保険が適用されるかどうかで大きく異なります。「顎変形症」という診断名がつき、厚生労働省が定める施設基準を満たした医療機関(指定自立支援医療機関)で治療を受ける場合に限り、外科矯正手術およびその前後に行う歯列矯正に健康保険が適用されます。ミライズ顎変形症クリニックも2024年7月より保険医療機関として認定されており、保険適用の場合、自己負担額は約50〜80万円程度が目安となります(高額療養費制度の利用も可能です)。一方、美容目的や軽度の症例など、保険適用外と判断された場合は自費診療となります。ミライズクリニックでの自費手術費用は、麻酔代や諸経費を含め約220〜370万円(税込)です。どちらの治療になるかは、専門医による精密な検査と診断に基づいて決定されますので、まずはカウンセリングで相談することが重要です。

参考文献

  1. Baccetti T, et al. The Cervical Vertebral Maturation (CVM) method for the assessment of optimal treatment timing in dentofacial orthopedics. Semin Orthod. 2005;11(3):119-129.
  2. Ngan P, et al. Evolution of Class III treatment in orthodontics. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2015;148(1):22-36.
  3. Sugawara J, et al. Treatment timing for skeletal Class III malocclusion. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2004;125(5):566-567.
  4. 日本顎変形症学会. 顎変形症診療ガイドライン. 2023.

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の執筆者

富田 大介

富田 大介(とみた だいすけ)

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(現・東京科学大学)咬合機能矯正学分野修了。ミライズウェルメディカルグループ代表・統括院長として外科矯正の矯正歯科側治療計画を専門とし、Surgery First・Early Surgeryの豊富な臨床経験を有する。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。口腔外科専門医との23年間に及ぶ連携歴に基づく精密な治療計画の立案と、デジタルワークフローシステムの構築を主導。

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日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

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