患者体験

メンタル面の変化:骨格が変わるということ

患者体験約9分で読めます

執筆者

富田大介

査読・監修

君塚幸子

日本口腔外科学会認定医・指導医 / 日本顎変形症学会認定医

参考文献

  • 1. Kettunen S, Lappalainen OP, Palotie T, Furuholm J, Auro K, Snäll J. Psychiatric morbidity is common in orthognathic surgery patients—a retrospective study. Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology and Oral Radiology. 2023;135(6):716-723. DOI: 10.1016/j.oooo.2022.09.009
  • 2. Häberle A, Alkofahi H, Qiao J, Safer DL, Mittermiller PA, Menorca R, Trickey AW, Girod S. Body Image Disturbance and Obsessive-Compulsive Disorder Symptoms Improve After Orthognathic Surgery. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2020;78(11):2054-2060. DOI: 10.1016/j.joms.2020.07.021
  • 3. Kao CY, Huang TH, Ho CT, Hsieh YH, Kao CT. Evaluating the impact of orthognathic surgery on mental health, function, and quality of life. Journal of Dental Sciences. 2025;20(4):2292-2300. DOI: 10.1016/j.jds.2025.05.016
  • 4. Alkaabi S, Alsabri G, Alyammahi A, Aljamani S, Maningky M, Helder M. Psychological and quality of life outcomes following orthognathic surgery: A comprehensive systematic review. Advances in Oral and Maxillofacial Surgery. 2025;18:100522. DOI: 10.1016/j.adoms.2025.100522
  • 5. 稲原英恵. 顎変形症患者の顎矯正手術後の顔貌変化に対する精神心理学的検討―抑うつの評価や QOL 調査を用いた心理変化の分析―. 東北大学博士論文. 2014;1:1-35. DOI: 10.14922/thesis.tohoku.2014

顎変形症の手術は機能改善だけでなく、術後の心理的変化やボディイメージに影響を与えます。術後の一時的な気分の落ち込み(術後うつ)のリスクと、それに適応していく過程を理解することが重要です。当院では、機能的な咬合の獲得を目指し、患者さんのメンタル面もサポートする体制を整えています。

顎変形症の手術がメンタルに与える影響とは

顎変形症の治療において、外科的矯正手術は噛み合わせ(咬合)の機能を根本から改善するための重要なプロセスです。しかし、この手術は単に機能的な問題を解決するだけでなく、患者さんのメンタル面にも多大な影響を及ぼします。顎変形症の手術とメンタルの関係は、近年多くの研究で注目されており、術前後の心理的なサポートが治療の成功において不可欠であると認識されています。

手術によって顎の骨格が大きく変化すると、それに伴い顔貌も劇的に変化します。これは長年のコンプレックスが解消される喜びをもたらす一方で、急激な変化に対する戸惑いや不安を引き起こすこともあります。長年見慣れた自分の顔が変わるということは、アイデンティティの一部が揺さぶられるような感覚を伴うことがあるのです。

患者さん第一の視点に立つと、機能的な咬合の重要性を深く理解していただくと同時に、これらの心理的変化に寄り添うことが医療者の重要な役割となります。私たちは、手術がゴールではなく、新しい自分を受け入れ、快適な生活を送るためのスタートラインであると考えています。

術後の心理的変化とボディイメージの適応

手術直後から数ヶ月にかけて、患者さんは自身の新しい顔貌に対するボディイメージの再構築を経験します。多くの場合、噛み合わせが改善し、食事がしやすくなるなどの機能的なメリットを実感するにつれて、自己肯定感が高まっていきます。これまで口元を隠して笑っていた方が、自然な笑顔を見せてくださるようになるのは、私たち医療者にとっても非常に嬉しい瞬間です。

しかし、腫れや痺れなどのダウンタイム中は、鏡を見るたびに不安を感じることも少なくありません。「本当に腫れは引くのだろうか」「想像していた顔と違うのではないか」といった不安は、多くの患者さんが経験する自然な感情です。新しい自分に適応するまでには個人差があり、数週間から数ヶ月の時間を要することが一般的です。この期間中、私たちは患者さんが抱える不安を軽減できるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけています。

術後の時期主な身体的状態メンタル・心理的変化の傾向
術後1〜2週間腫れがピーク、食事制限あり、会話が困難不安感、一時的な気分の落ち込み、後悔の念、孤独感
術後1〜3ヶ月腫れが引き始める、機能回復の兆し、食事が少しずつ可能に新しい顔貌への戸惑い、少しずつの適応、期待感の芽生え
術後半年以降骨格が安定、噛み合わせの改善を実感、自然な表情自己肯定感の向上、ボディイメージの確立、満足度の増加

術後うつとメンタルヘルスへの対策

顎変形症の手術後には、一時的な気分の落ち込み、いわゆる術後うつを経験する患者さんが一定数いらっしゃいます。これは決して珍しいことではなく、全身麻酔による身体的ストレス、術後の痛みや腫れ、長期間にわたる食事制限によるストレス、そして急激な外見の変化に対する脳の処理が追いつかないことなどが複合的に絡み合って引き起こされます。

医療広告ガイドラインに則り、リスクや副作用についても誠実にお伝えする必要があります。手術には感染症や神経麻痺などの身体的リスクだけでなく、こうしたメンタル面でのリスクも存在します。特に、術前の期待値が高すぎた場合や、ダウンタイムの辛さを十分に想定できていなかった場合に、術後うつのリスクが高まる傾向があります。

そのため、術前から術後の経過について十分にシミュレーションを行い、起こりうる心理的変化についてあらかじめ理解していただくことが、術後うつの予防や早期回復に繋がります。当院では、術後の辛い時期を乗り越えるための具体的なアドバイスや、いつでも相談できる体制を整えることで、患者さんのメンタルヘルスをサポートしています。

ミライズ顎変形症クリニックの治療実績とサポート体制

ミライズ顎変形症クリニックでは、患者さんが安心して治療に臨めるよう、高度な専門性と充実したサポート体制を提供しています。当院は、矯正歯科と口腔外科の両方で日本顎変形症学会認定医を擁する全国唯一の民間施設です。

統括院長である私、富田大介は日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)であり、東京都の民間クリニックでは唯一の存在です。また、名誉顧問・医学博士の大村進、そして日本口腔外科学会認定医・指導医である君塚幸子とともに、チーム医療で患者さんを多角的にサポートしています。

当院の独自データによれば、これまでに143例の顎変形症手術を手がけてまいりました。特筆すべきは、低侵襲な手術アプローチと徹底した術後管理により、社会復帰までの期間が1週間未満の患者さんが63%以上に上ることです。また、術後の患者満足度は8.9/10と非常に高く、重篤合併症は0件を維持しています。この実績は、単なる機能改善にとどまらず、患者さんのメンタル面への負担を最小限に抑える取り組みの結果であると自負しております。

機能的な咬合の獲得とQOL・満足度の向上

顎変形症治療の最終的なゴールは、見た目の変化だけでなく、生涯にわたって健康的に噛める「機能的な咬合」を獲得することです。正しい噛み合わせは、特定の歯への過度な負担を防ぎ、歯の寿命を延ばすだけでなく、消化器官への負担を軽減し、全身の健康維持に大きく寄与します。

機能が改善されることで、硬いものをしっかりと噛み砕けるようになり、人前で食事を楽しむことができるようになります。また、発音も明瞭になり、コミュニケーションにおける自信にも繋がります。こうした日々の生活における小さな変化の積み重ねが、結果として患者さんのQOL(生活の質)を劇的に向上させます。

術後の満足度が高い背景には、単なる外見の変化を超えた、心身両面での健康の獲得があるのです。骨格が変わるということは、人生の新しいステージへの第一歩です。私たちは、その大きな決断をされた患者さん一人ひとりのメンタルに寄り添い、最良の医療を提供し続けます。

著者情報

  • 執筆・監修:富田大介(ミライズ顎変形症クリニック 統括院長 / 日本顎変形症学会認定医・矯正歯科 / 東京都民間クリニック唯一)
  • 査読者:君塚幸子(日本口腔外科学会認定医・指導医)
  • 公開日:2026年09月10日
  • 更新日:2026年09月10日

参考文献

  1. Kettunen S, Lappalainen OP, Palotie T, Furuholm J, Auro K, Snäll J. Psychiatric morbidity is common in orthognathic surgery patients—a retrospective study. Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology and Oral Radiology. 2023;135(6):716-723. DOI: 10.1016/j.oooo.2022.09.009
  2. Häberle A, Alkofahi H, Qiao J, Safer DL, Mittermiller PA, Menorca R, Trickey AW, Girod S. Body Image Disturbance and Obsessive-Compulsive Disorder Symptoms Improve After Orthognathic Surgery. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2020;78(11):2054-2060. DOI: 10.1016/j.joms.2020.07.021
  3. Kao CY, Huang TH, Ho CT, Hsieh YH, Kao CT. Evaluating the impact of orthognathic surgery on mental health, function, and quality of life. Journal of Dental Sciences. 2025;20(4):2292-2300. DOI: 10.1016/j.jds.2025.05.016
  4. Alkaabi S, Alsabri G, Alyammahi A, Aljamani S, Maningky M, Helder M. Psychological and quality of life outcomes following orthognathic surgery: A comprehensive systematic review. Advances in Oral and Maxillofacial Surgery. 2025;18:100522. DOI: 10.1016/j.adoms.2025.100522
  5. 稲原英恵. 顎変形症患者の顎矯正手術後の顔貌変化に対する精神心理学的検討―抑うつの評価や QOL 調査を用いた心理変化の分析―. 東北大学博士論文. 2014;1:1-35. DOI: 10.14922/thesis.tohoku.2014

関連FAQ

Q1. 手術後に気分が落ち込むことはよくあるのでしょうか? A1. はい、一時的な気分の落ち込み(術後うつ)は珍しいことではありません。手術による身体的ストレスや腫れ、食事制限などが原因となります。多くの場合、回復とともに改善しますが、不安な時はいつでもご相談ください。

Q2. 顔の印象が変わることで、周りの反応が気になります。 A2. 骨格の変化に伴い顔貌も変わるため、周囲の反応に戸惑うこともあるかもしれません。しかし、機能的な噛み合わせを獲得することで自然な表情となり、徐々に新しいボディイメージに適応していく方がほとんどです。

Q3. 術後のメンタルサポートはしてもらえますか? A3. 当院では、術前からの丁寧なカウンセリングを通じて、術後の経過や起こりうる心理的変化について十分にご説明しています。術後も定期的な診察で身体とメンタルの両面からサポートいたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の執筆者

富田 大介

富田 大介(とみた だいすけ)

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(現・東京科学大学)咬合機能矯正学分野修了。ミライズウェルメディカルグループ代表・統括院長として外科矯正の矯正歯科側治療計画を専門とし、Surgery First・Early Surgeryの豊富な臨床経験を有する。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。口腔外科専門医との23年間に及ぶ連携歴に基づく精密な治療計画の立案と、デジタルワークフローシステムの構築を主導。

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この記事の査読者

君塚 幸子

君塚 幸子

口腔外科医 / 日本顎変形症学会認定医・指導医

日本口腔外科学会認定医・専門医・指導医日本顎変形症学会認定医(口腔外科)

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