呼吸・睡眠

顎変形症治療で鼻呼吸や睡眠は変わる?気道・呼吸・日中の過ごしやすさとの関係を専門的に解説

呼吸・睡眠約19分で読めます

顎変形症と口呼吸・鼻呼吸・気道の関係性、骨格バランスが呼吸に影響しうる理由、手術によって変わりうることと変わらないこと、術式や骨格型による呼吸への影響の違い、睡眠や日中の疲れを考えるうえで重要な評価ポイントを専門医が解説します。

この記事でわかること

  • 顎変形症と口呼吸・鼻呼吸・気道の関係性
  • 骨格バランスが呼吸に影響しうる理由
  • 手術によって変わりうることと変わらないこと
  • 術式や骨格型による呼吸への影響の違い
  • 睡眠や日中の疲れを考えるうえで重要な評価ポイント

顎変形症と口呼吸・鼻呼吸・気道の関係

顎変形症の患者様の中には、口呼吸が習慣化している方や、睡眠時の呼吸に不安を感じている方が少なくありません。顎の骨格的な位置異常は、気道の広さや呼吸のしやすさに密接に関わっています。特に、下顎が後退している(小顎症)場合や、上顎が狭い場合、舌の収まるスペースが狭くなり、舌が後方に押しやられることがあります。これにより、気道(空気の通り道)が狭くなり、睡眠時のいびきや無呼吸の原因となることがあります。

口呼吸と鼻呼吸の違い

本来、人間の呼吸は鼻で行うのが自然です。鼻呼吸は、吸い込んだ空気を加湿・加温し、フィルターの役割を果たしてホコリや細菌の侵入を防ぎます。一方、口呼吸が習慣化すると、乾燥した冷たい空気が直接喉に届き、感染症のリスクが高まるだけでなく、口腔内の乾燥による虫歯や歯周病の原因にもなります。顎変形症の患者様では、骨格的な問題から口唇が閉じにくく、無意識のうちに口呼吸になっているケースが多く見られます。

気道への影響

気道は、鼻腔から咽頭、喉頭を経て肺へと続く空気の通り道です。顎変形症において特に問題となるのは、咽頭部の気道の狭窄です。下顎が後退している場合、舌根(舌の付け根)が後方に位置しやすくなり、気道が狭くなる傾向があります。特に仰向けで寝る際、重力によって舌がさらに後方に落ち込みやすくなり、気道が塞がれやすくなります。これが、睡眠時のいびきや無呼吸の一因となることがあります。

骨格バランスが呼吸に影響しうる理由

骨格のバランスは、気道の広さや呼吸のしやすさに直接的な影響を与えます。上顎と下顎の位置関係、大きさ、幅などが、呼吸機能にどのように関わっているのかを詳しく見ていきましょう。

下顎の位置と気道

下顎骨は、舌や舌骨に付着する筋肉の土台となっています。そのため、下顎の位置は舌の位置に直結し、ひいては気道の広さに影響を与えます。下顎が後退している(下顎後退症)場合、舌根が後方に押しやられ、咽頭部の気道が狭くなります。逆に、下顎が前方に突出している(下顎前突症)場合、気道は比較的広く保たれる傾向があります。

上顎の幅と鼻腔

上顎骨は、鼻腔(鼻の奥の空間)の底面を形成しています。そのため、上顎の幅が狭い(狭窄歯列弓)場合、鼻腔も狭くなることが多く、鼻呼吸の抵抗が増加します。これにより、鼻呼吸がしにくくなり、代償的に口呼吸になりやすくなります。また、上顎が後退している場合も、鼻腔の容積が減少し、同様の問題が生じる可能性があります。

口唇の閉鎖不全

上顎前突症(出っ歯)や開咬(前歯が噛み合わない状態)などの場合、安静時に口唇を自然に閉じることが難しくなります(口唇閉鎖不全)。口唇を閉じるためにオトガイ部(あごの梅干し状のシワ)に過度な緊張が必要となり、無意識のうちに口が開きやすくなります。これが口呼吸を誘発し、口腔内の乾燥や感染症のリスクを高める要因となります。

手術で変わりうること/変わらないこと

顎変形症の手術(外科矯正)によって、骨格のバランスが改善されると、呼吸や睡眠にも変化が現れることがあります。しかし、すべての症状が改善するわけではなく、限界もあります。ここでは、手術によって期待できる変化と、手術だけでは解決できない問題について整理します。

変わりうること

  • 気道の拡大: 下顎を前方に移動させる手術(下顎前方移動術など)により、舌根が前方に引き出され、咽頭部の気道が広がる可能性があります。これにより、睡眠時のいびきや無呼吸が改善するケースがあります。
  • 鼻呼吸のしやすさ: 上顎を広げる手術(SARPEなど)や前方に移動させる手術により、鼻腔が広がり、鼻呼吸の抵抗が減少することがあります。
  • 口唇の閉鎖: 骨格的な問題で口が閉じにくかった場合、手術によって上下の顎の位置関係が改善し、口唇が自然に閉じやすくなります。これにより、口呼吸から鼻呼吸への移行が期待できます。

変わらないこと

  • アレルギー性鼻炎などの疾患: 鼻呼吸がしにくい原因が、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症、鼻茸(鼻ポリープ)などの耳鼻咽喉科的な疾患である場合、顎変形症の手術だけでは改善しません。これらの疾患に対する適切な治療が別途必要です。
  • 習慣的な口呼吸: 長年の習慣による口呼吸は、手術によって骨格的な問題が解決しても、すぐには改善しない場合があります。意識的なトレーニング(MFT:口腔筋機能療法など)が必要になることがあります。
  • 肥満による気道狭窄: 睡眠時無呼吸症候群の原因が肥満による気道周辺の脂肪沈着である場合、顎変形症の手術だけでは十分な改善が得られないことがあります。減量などの生活習慣の改善が不可欠です。

術式や骨格型による違いを一般向けに整理

顎変形症の手術による呼吸への影響は、術式や骨格型によって大きく異なります。ここでは、代表的な骨格型と術式ごとに、気道や鼻呼吸への影響の傾向を整理します。

下顎前突症(受け口)の手術

下顎前突症に対して、下顎を後方に下げる手術(SSROやIVROなど)を行うと、舌根が後方に移動するため、咽頭部の気道がわずかに狭くなる可能性があります。しかし、通常は日常生活や睡眠に支障をきたすほどではありません。ただし、もともと気道が狭い方や、肥満傾向がある方、睡眠時無呼吸症候群のリスクがある方の場合は、術前の慎重な評価が必要です。必要に応じて、上顎を前方に移動させる手術を併用する(上下顎同時移動術)ことで、気道の狭窄を防ぐ計画を立てることがあります。

下顎後退症(小顎症)の手術

下顎後退症に対して、下顎を前方に引き出す手術(下顎前方移動術など)を行うと、舌根が前方に引き出され、咽頭部の気道が広がることが期待できます。これにより、呼吸がしやすくなり、睡眠時のいびきや無呼吸の改善につながるケースもあります。

上顎前突症(出っ歯)の手術

上顎前突症に対して、上顎を後方に下げる手術(上顎分節骨切り術など)を行う場合、鼻腔の容積がわずかに減少する可能性があります。鼻呼吸への影響を最小限に抑えるため、術前のシミュレーションが重要です。

上下顎前突症(口ゴボ)の手術

上下顎前突症に対して、上下の顎を後方に下げる手術を行う場合、気道や鼻腔がわずかに狭くなる可能性があります。術前の評価で気道が狭いと判断された場合は、抜歯矯正のみで対応するか、手術の移動量を調整するなどの配慮が必要です。

骨格型主な術式気道への影響の傾向鼻呼吸への影響の傾向
下顎前突症下顎後退術わずかに狭くなる可能性影響は少ない
下顎後退症下顎前方移動術広がる可能性が高い影響は少ない
上顎前突症上顎後退術影響は少ないわずかに狭くなる可能性
上下顎前突症上下顎後退術わずかに狭くなる可能性わずかに狭くなる可能性

表1: 骨格・呼吸・睡眠の関係を考える視点

睡眠や日中の疲れを考えるうえで重要な評価

顎変形症の治療において、睡眠や日中の疲れを改善することを主目的とすることは推奨されません。顎変形症の手術は、あくまで噛み合わせや顔貌の改善を目的としたものであり、睡眠時無呼吸症候群の治療法として確立されているわけではないからです。しかし、治療計画を立てる上で、呼吸や睡眠に関する評価は非常に重要です。

セファログラム(頭部X線規格写真)による気道の評価

側面のセファログラムを用いて、咽頭部の気道の広さを評価します。特に下顎を後退させる手術を計画する場合、術後の気道の狭窄リスクを予測するために重要です。気道が著しく狭い場合は、術式の変更や移動量の調整を検討します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)のスクリーニング

いびきがひどい、睡眠中に呼吸が止まる、日中の強い眠気があるなどの症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。問診や簡易検査(アプノモニターなど)でスクリーニングを行い、疑いがある場合は、専門の医療機関(睡眠外来や耳鼻咽喉科)での精密検査(終夜睡眠ポリグラフィーなど)を勧めることがあります。

耳鼻咽喉科的な評価

鼻づまりや口呼吸が著しい場合、アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲症などの耳鼻咽喉科的な疾患が隠れている可能性があります。必要に応じて耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を先行させるか、並行して行うことが重要です。

相談したい症状

以下のような症状がある場合は、顎変形症の診察時に担当医に必ずご相談ください。これらの症状は、治療計画を立てる上で重要な情報となります。

  • 常に口呼吸をしている、鼻で呼吸するのが苦しい
  • 睡眠中にいびきをかく、呼吸が止まると家族に言われたことがある
  • 朝起きたときに口の中がカラカラに乾いている、喉が痛い
  • 日中の強い眠気や集中力の低下を感じる、疲れが取れない
  • 睡眠薬や精神安定剤を服用している

これらの症状は、顎変形症だけでなく、他の疾患が原因である可能性もあります。必要に応じて、適切な専門科(耳鼻咽喉科、睡眠外来、内科など)への受診をご案内し、連携して治療を進めることが重要です。

FAQ

Q1. 顎変形症の手術をすれば、必ずいびきは治りますか? A1. 必ず治るわけではありません。下顎を前方に移動させる手術では気道が広がり、いびきが改善する可能性がありますが、いびきの原因は肥満、扁桃肥大、鼻炎など様々です。骨格的な問題以外が原因である場合、手術だけでは改善しません。

Q2. 手術後に鼻呼吸がしにくくなることはありますか? A2. 上顎を後方に下げる手術や、上顎を上方に移動させる手術では、鼻腔の容積が減少し、一時的に鼻呼吸がしにくくなることがあります。多くは時間の経過とともに適応しますが、術前の評価とシミュレーションが重要です。

Q3. 睡眠時無呼吸症候群の治療として顎変形症の手術を受けることはできますか? A3. 顎変形症の手術は、噛み合わせや顔貌の改善を主目的としています。睡眠時無呼吸症候群の治療としては、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)やマウスピース治療が第一選択となることが多く、手術(顎矯正手術)は特定の重症ケースや他の治療法が困難なケースに限られます。安易に手術を睡眠時無呼吸症候群の治療として選択することは推奨されません。

Q4. 手術後、集中力は上がりますか? A4. 手術によって気道が広がり、睡眠の質が改善した場合、結果として日中の眠気が減少し、集中力が向上する可能性はあります。しかし、集中力の低下には様々な要因が絡んでおり、手術によって必ず改善すると確約するものではありません。

Q5. 口呼吸を治すためのトレーニングは必要ですか? A5. 手術によって骨格的な問題(口唇閉鎖不全など)が解決しても、長年の習慣で口呼吸や舌の突出癖が残る場合があります。その場合は、口腔筋機能療法(MFT)などのトレーニングを行い、正しい舌の位置や呼吸法を身につけることが有効です。

Q6. 術前の検査で気道が狭いと言われました。手術は受けられますか? A6. 気道が狭い場合、下顎を後退させる手術は慎重に検討する必要があります。術後の気道狭窄リスクを避けるため、下顎の移動量を減らしたり、上顎を前方に移動させる手術を併用したりするなど、術式や計画を変更して気道を確保する工夫を行います。

Q7. 鼻炎持ちですが、手術に影響はありますか? A7. 鼻炎による鼻づまりがある場合、術後の呼吸管理(特に顎間固定中)に影響を与える可能性があります。術前に耳鼻咽喉科を受診し、点鼻薬や内服薬で症状をコントロールしておくことをお勧めすることがあります。

Q8. 手術後の腫れで呼吸が苦しくなることはありますか? A8. 術後数日は顔や口の中、気道周辺の粘膜が腫れるため、一時的に呼吸がしにくく感じることがあります。入院中は医療スタッフが酸素飽和度モニターなどを用いて呼吸状態をしっかりと管理し、必要に応じて酸素投与や腫れを抑える点滴を行いますのでご安心ください。

まとめ

顎変形症の治療は、骨格のバランスを整えることで、気道や呼吸、睡眠に影響を与える可能性があります。下顎を前方に移動させる手術では気道が広がり呼吸がしやすくなることが期待できる一方で、下顎を後退させる手術では気道が狭くなるリスクも考慮する必要があります。

手術によって「必ず睡眠が良くなる」「集中力が改善する」とは言えませんが、術前の精密なセファログラム検査やシミュレーションにより、呼吸への影響を予測し、安全な治療計画を立てることが重要です。呼吸や睡眠に関する不安がある場合、またはいびきや日中の眠気などの症状がある場合は、担当医にしっかりと相談し、必要に応じて耳鼻咽喉科や睡眠外来などの専門医の診察を受けることをお勧めします。


注意書き 本記事は顎変形症・外科矯正に関する一般的な情報提供を目的としています。実際の治療適応、治療内容、治療期間、費用、リスクや副作用は、骨格・咬合・既往歴・希望内容などにより異なります。詳しくは、医師・歯科医師の診察と検査に基づき個別に判断されます。

監修者情報

<div class="supervisor-info"> <img src="/images/doctor-tomita.jpg" alt="富田大介院長" class="supervisor-photo"> <div class="supervisor-details"> <h3>富田 大介(とみた だいすけ)</h3> <p>日本顎変形症学会認定医 / 日本矯正歯科学会認定医・代議員</p> <p>昭和大学歯学部卒業。ミライズ顎変形症クリニック院長として外科矯正・骨切り手術を専門とし、東京医科歯科大学でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。</p> <p><a href="/doctor/tomita-daisuke">詳細プロフィールはこちら</a></p> </div> </div>

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顎変形症治療における呼吸機能評価の重要性

顎変形症の治療において、顔貌や噛み合わせの改善だけでなく、呼吸機能の評価が非常に重要です。なぜなら、骨格の移動が気道や鼻腔の容積に直接影響を与えるからです。特に、下顎を後退させる手術(下顎枝矢状分割術:SSROなど)では、舌根が後方に移動し、咽頭気道が狭くなるリスクがあります。そのため、術前の精密な検査とシミュレーションが不可欠です。

術前検査における気道の評価

術前検査では、側方セファログラム(頭部X線規格写真)やCTスキャンを用いて、気道の広さを評価します。セファログラムでは、軟口蓋(上あごの奥の柔らかい部分)や舌根の位置、咽頭後壁との距離を測定し、気道の狭窄度合いを確認します。CTスキャンでは、気道の断面積や体積を3次元的に評価することができ、より詳細な情報が得られます。これらのデータをもとに、手術による気道の変化を予測し、安全な移動量を決定します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関連

顎変形症の患者様の中には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を合併している方がいます。SASは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気で、日中の強い眠気や倦怠感、集中力の低下を引き起こします。また、高血圧や心疾患、脳卒中などのリスクを高めることも知られています。顎変形症の治療において、SASのスクリーニングは非常に重要です。問診でいびきや無呼吸の症状が疑われる場合は、アプノモニターなどの簡易検査を行い、必要に応じて睡眠外来などの専門医療機関での精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー:PSG)を勧めます。

術式選択への影響

気道の評価結果は、術式の選択に大きな影響を与えます。例えば、下顎前突症で気道が狭い患者様の場合、下顎のみを後退させる手術では気道がさらに狭くなり、SASを発症または悪化させるリスクがあります。このようなケースでは、上顎を前方に移動させる手術(ルフォーI型骨切り術)を併用する上下顎同時移動術を選択し、気道の狭窄を防ぐ、あるいは拡大させる計画を立てることがあります。

手術後の呼吸管理とリハビリテーション

顎変形症の手術後は、顔や口の中の腫れにより、一時的に呼吸がしにくくなることがあります。そのため、術後の呼吸管理とリハビリテーションが重要となります。

術直後の呼吸管理

手術直後は、気管挿管(呼吸を助けるためのチューブ)が抜けた後も、気道周辺の粘膜の腫れや分泌物(痰など)により、呼吸が苦しく感じることがあります。入院中は、医療スタッフが血中酸素飽和度(SpO2)モニターなどを用いて呼吸状態を24時間体制で監視します。必要に応じて、酸素投与やネブライザー(吸入器)による加湿、痰の吸引などを行い、安全な呼吸を確保します。また、腫れを抑えるためのステロイド剤の点滴なども行われます。

顎間固定中の呼吸

術後、噛み合わせを安定させるために、上下の歯をゴムやワイヤーで固定する「顎間固定」を行う場合があります。顎間固定中は口を開けることができないため、鼻呼吸が主体となります。この時期に鼻づまりがあると、呼吸が非常に苦しくなります。そのため、術前にアレルギー性鼻炎などの治療を行っておくことが重要です。また、術後も点鼻薬などを使用して鼻の通りを良くする工夫が必要です。

口腔筋機能療法(MFT)の役割

手術によって骨格的な問題が解決しても、長年の習慣で口呼吸や舌の突出癖(舌を前歯に押し付ける癖)が残っている場合があります。これらの悪習癖は、後戻り(治療後に元の状態に戻ろうとする現象)の原因となるだけでなく、呼吸機能にも悪影響を及ぼします。そのため、術後に口腔筋機能療法(MFT)と呼ばれるリハビリテーションを行うことがあります。MFTでは、舌の正しい位置(スポット)を覚えさせ、口唇を閉じる力を鍛えるトレーニングを行います。これにより、正しい鼻呼吸の習慣を身につけ、治療結果の安定を図ります。

顎変形症治療とQOL(生活の質)の向上

顎変形症の治療は、噛み合わせや顔貌の改善だけでなく、呼吸機能の改善を通じて、患者様のQOL(生活の質)の向上に貢献する可能性があります。

睡眠の質の改善

下顎後退症などの患者様で、手術によって気道が拡大した場合、睡眠時のいびきや無呼吸が改善し、睡眠の質が向上することがあります。深い睡眠が得られるようになることで、朝の目覚めが良くなり、日中の眠気や倦怠感が軽減されることが期待できます。

日中のパフォーマンス向上

睡眠の質が改善し、日中の眠気が軽減されることで、仕事や学業における集中力やパフォーマンスが向上する可能性があります。また、口呼吸から鼻呼吸に移行することで、口腔内の乾燥が防がれ、風邪などの感染症にかかりにくくなるというメリットもあります。

心理的な変化

顔貌のコンプレックスが解消されることで、自分に自信が持てるようになり、対人関係や社会生活において前向きな変化が現れる患者様も多くいらっしゃいます。心身両面での健康状態の改善が、総合的なQOLの向上につながります。

ただし、繰り返しになりますが、顎変形症の手術は「必ず睡眠が良くなる」「集中力が改善する」ことを保証するものではありません。治療の主目的はあくまで噛み合わせと顔貌の改善であり、呼吸機能や睡眠の改善は副次的な効果として期待されるものです。治療を受ける際は、担当医と十分に相談し、治療の限界やリスクについても理解しておくことが重要です。

参考文献

  1. Schendel SA, et al. Airway changes with orthognathic surgery. J Oral Maxillofac Surg. 2014;72(10):1965-1981.
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  4. 日本睡眠学会. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の診断・治療ガイドライン. 2023.
  5. Camacho M, et al. Maxillomandibular advancement for obstructive sleep apnoea: a meta-analysis. Br J Oral Maxillofac Surg. 2019;57(4):302-312.

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の監修医

富田大介統括院長

富田 大介(とみた だいすけ)

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(現・東京科学大学)咬合機能矯正学分野修了。ミライズウェルメディカルグループ代表・統括院長として外科矯正の矯正歯科側治療計画を専門とし、Surgery First・Early Surgeryの豊富な臨床経験を有する。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。口腔外科専門医との23年間に及ぶ連携歴に基づく精密な治療計画の立案と、デジタルワークフローシステムの構築を主導。

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