費用・制度

高額療養費制度の実際の還付額

公開日:2025-09-03 最終更新:2025-09-03

顎変形症の外科矯正費用は保険適用となりますが、高額療養費制度を利用することで自己負担を大幅に軽減できます。事前に「限度額適用認定証」を取得することで、退院時の窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることが可能です。医療費控除と併用することで、確定申告を通じてさらなる税金の還付や負担軽減が期待できます。

高額療養費制度とは?顎変形症治療における重要性

顎変形症の治療は、単なる見た目の改善ではなく、咀嚼(そしゃく)や発音といった機能的な咬合(噛み合わせ)を回復させるための重要な医療行為です。上下の顎の骨のバランスが著しく崩れている場合、通常の歯科矯正だけでは根本的な解決が難しく、外科手術を伴う治療が必要となります。そのため、国が定める特定の基準を満たす場合、外科矯正費用や入院費用は健康保険の適用となります。

しかし、保険が適用されて3割負担になったとしても、手術を伴う治療では一時的な窓口負担が数十万円と高額になることが少なくありません。そこで重要となるのが「高額療養費制度」です。この制度は、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が一定の基準(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた金額が後から還付される仕組みです。顎変形症の治療において、この制度を正しく理解し活用することは、患者さんが経済的な不安を抱えることなく、安心して治療に専念するための第一歩となります。

自己負担限度額と実際の還付額のシミュレーション

高額療養費制度における自己負担限度額は、患者さんの年齢や所得水準によって細かく設定されています。一般的な所得水準(年収約370万円〜770万円)の方を例に挙げると、1ヶ月の自己負担限度額はおおよそ8万円〜9万円程度となります。

以下の表は、70歳未満の方の所得区分ごとの自己負担限度額の目安をまとめたものです。

例えば、顎変形症の手術と入院費用で総医療費が100万円かかった場合、窓口での3割負担は30万円となります。しかし、一般的な所得区分(年収約370万〜770万円)の方であれば、自己負担限度額は「80,100円 + (1,000,000円 - 267,000円) × 1% = 87,430円」となります。

つまり、窓口で30万円を支払った後、申請を行うことで差額の212,570円が後日還付される計算になります。ただし、入院中の食事療養費や差額ベッド代(個室料など)、保険適用外の先進医療費などは高額療養費制度の対象外となるため、全額自己負担となります。事前の資金計画を立てる際には、これらの費用も考慮に入れておくことが重要です。

限度額適用認定証の取得と入院費用の支払い

高額療養費制度を利用して後から還付を受けることも可能ですが、一時的に数十万円の支払いが発生することは、多くの患者さんにとって大きな負担となります。そこでおすすめしているのが、「限度額適用認定証」の事前取得です。

入院前にご加入の健康保険組合や協会けんぽ、市町村の国民健康保険窓口で手続きを行い、限度額適用認定証を取得しておきます。これを退院時の会計窓口で健康保険証とともに提示することで、窓口での支払いを最初から自己負担限度額までに抑えることができます。

例えば先ほどの例で言えば、窓口での支払いが最初から87,430円(+食事代等)で済むことになります。これにより、後日還付の手続きを行う手間が省け、まとまった資金を事前に用意する負担を大幅に軽減できます。申請から認定証が手元に届くまでには1〜2週間程度かかることがあるため、手術の日程が決まり次第、早めに手続きを行うことを推奨します。

医療費控除との併用によるさらなる負担軽減

高額療養費制度を利用して自己負担を抑えた後でも、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額(通常は10万円、または総所得金額等の5%のいずれか低い額)を超える場合、「医療費控除」の対象となります。医療費控除は、確定申告を行うことで所得税の一部が還付されたり、翌年の住民税が減額されたりする制度です。

顎変形症の治療にかかった外科矯正費用や入院費用だけでなく、通院のための交通費(電車やバスなどの公共交通機関)、処方された薬代、さらには生計を一にする家族の医療費も合算して医療費控除の対象に含めることができます。

ただし、高額療養費制度で還付された金額や、生命保険などから支給された入院給付金などは、支払った医療費から差し引いて計算する必要があります。確定申告を適切に行うことで、最終的な実質負担額をさらに軽減することが可能です。医療費の領収書や交通費のメモは、確定申告の際に必要となるため、大切に保管しておきましょう。

治療計画と医師の連携

ミライズ顎変形症クリニックでは、矯正歯科と口腔外科の医師が連携し、検査結果に基づいて治療計画を検討します。富田大介、君塚幸子、大村進を含む医師の資格・経歴・担当内容は、医師紹介ページで公開しています。

外科手術を伴う治療では、術後の腫れや痛み、知覚鈍麻、後戻りなどのリスクが生じる可能性があります。入院期間、生活復帰の時期、治療結果には個人差があるため、診察・検査の結果とあわせて説明します。

まとめ:費用負担を抑えて機能的な噛み合わせを取り戻す

顎変形症の治療は、高額療養費制度や限度額適用認定証、そして医療費控除を賢く活用することで、経済的な負担を大きく軽減することができます。費用に関する不安を取り除き、正しい噛み合わせと健康的な生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。

当院では、治療内容だけでなく、費用や制度の利用方法についても丁寧にご説明いたします。ご不明な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

著者情報 - 著者:富田 大介(統括院長・日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)) - 査読者:君塚 幸子(日本口腔外科学会認定医・指導医) - 公開日:2026-07-30 - 更新日:2026-07-30

参考文献 1. 桑島幸紀, 上田茜, 川井忠, 田中寛之, 古城慎太郎, 本多孝之, 山田浩之, 佐藤和朗. 本邦におけるレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いた顎矯正手術の実態調査. 日本顎変形症学会雑誌. 2023;33(1):22-31. DOI: 10.5927/jjjd.33.22 2. 長谷部大地, 高橋功次朗, 遠藤諭, 竹内奈苗, 羽賀健太, 荻野奈保子, 竹内涼子, 原太一, 加藤祐介, 齋藤大輔, 丹原惇, 新美奏恵, 片桐渉, 齋藤功, 小林正治. 日本人におけるIndex of Orthognathic Functional Treatment Need(IOFTN)の有用性についての検討. 日本顎変形症学会雑誌. 2019;29(1):5-11. DOI: 10.5927/jjjd.29.5 3. 齋藤功, 丹原惇, 高橋功次朗, 竹山雅規. 外科的矯正治療の普及と質担保—保険適用から30年—. 日本顎変形症学会雑誌. 2021;31(4):187-189. DOI: 10.5927/jjjd.31.187 4. 野池淳一, 清水武, 五島秀樹, 上杉崇史, 横林敏夫. 当科における顎矯正手術に対するクリニカルパスの評価. 日本顎変形症学会雑誌. 2010;20(1):15-24. DOI: 10.5927/jjjd.20.15 5. 長谷部大地, 高橋功次朗, 加藤祐介, 齋藤大輔, 丹原惇, 新美奏恵, 片桐渉, 齋藤功, 小林正治. 日本人におけるIndex of Orthognathic Functional Treatment Need (IOFTN)の有用性についての検討─第2報:外科的矯正治療と矯正歯科治療のボーダーライン─. 日本顎変形症学会雑誌. 2019;29(4):289-294. DOI: 10.5927/jjjd.29.289

関連FAQ

Q. 高額療養費制度の申請はいつ行えばよいですか? A. 事前に「限度額適用認定証」を取得する場合は、入院の1ヶ月前〜数週間前までに、ご加入の健康保険窓口で手続きを行うことをおすすめします。事後申請の場合は、診療月の翌月の初日から2年以内であれば申請可能です。

Q. 差額ベッド代や食事代は高額療養費制度の対象になりますか? A. いいえ、差額ベッド代(個室料など)や入院中の食事療養費、保険適用外の治療費などは高額療養費制度の対象外となります。これらは全額自己負担となりますので、事前の資金計画にご注意ください。

Q. 医療費控除の確定申告には何が必要ですか? A. 確定申告には、医療費の領収書(または医療費のお知らせ)、源泉徴収票、マイナンバーカードなどの本人確認書類が必要です。通院にかかった交通費の記録(日時、経路、金額)もメモしておくと申告に利用できます。

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参考文献

  1. 桑島幸紀, 上田茜, 川井忠, 田中寛之, 古城慎太郎, 本多孝之, 山田浩之, 佐藤和朗. 本邦におけるレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いた顎矯正手術の実態調査. 日本顎変形症学会雑誌. 2023;33(1):22-31. DOI: 10.5927/jjjd.33.22
  2. 長谷部大地, 高橋功次朗, 遠藤諭, 竹内奈苗, 羽賀健太, 荻野奈保子, 竹内涼子, 原太一, 加藤祐介, 齋藤大輔, 丹原惇, 新美奏恵, 片桐渉, 齋藤功, 小林正治. 日本人におけるIndex of Orthognathic Functional Treatment Need(IOFTN)の有用性についての検討. 日本顎変形症学会雑誌. 2019;29(1):5-11. DOI: 10.5927/jjjd.29.5
  3. 齋藤功, 丹原惇, 高橋功次朗, 竹山雅規. 外科的矯正治療の普及と質担保—保険適用から30年—. 日本顎変形症学会雑誌. 2021;31(4):187-189. DOI: 10.5927/jjjd.31.187
  4. 野池淳一, 清水武, 五島秀樹, 上杉崇史, 横林敏夫. 当科における顎矯正手術に対するクリニカルパスの評価. 日本顎変形症学会雑誌. 2010;20(1):15-24. DOI: 10.5927/jjjd.20.15
  5. 長谷部大地, 高橋功次朗, 加藤祐介, 齋藤大輔, 丹原惇, 新美奏恵, 片桐渉, 齋藤功, 小林正治. 日本人におけるIndex of Orthognathic Functional Treatment Need (IOFTN)の有用性についての検討─第2報:外科的矯正治療と矯正歯科治療のボーダーライン─. 日本顎変形症学会雑誌. 2019;29(4):289-294. DOI: 10.5927/jjjd.29.289