基礎知識

ガミースマイルの原因別分類

基礎知識約11分で読めます

執筆者

富田大介

査読・監修

君塚幸子

日本口腔外科学会認定医・指導医 / 日本顎変形症学会認定医

参考文献

  • 1. Tomaz AFG, et al. Impact of orthognathic surgery on the treatment of gummy smile: an integrative review. Oral Maxillofac Surg. 2020;24(6):1-6. DOI: 10.1007/s10006-020-00857-4
  • 2. Wu H, et al. Surgical Management for Vertical Maxillary Excess. Oral Maxillofac Surg Clin North Am. 2023;35(1):37-48. DOI: 10.1016/j.coms.2022.06.012
  • 3. Khojasteh A, Mohaghegh S. Orthognathic surgery for management of gummy smile. Dent Clin North Am. 2022;66(3):385-398. DOI: 10.1016/j.cden.2022.02.003
  • 4. Chagas TF, et al. Duration of effectiveness of Botulinum toxin type A in excessive gingival display: a systematic review and meta-analysis. Braz Oral Res. 2018;32:e30. DOI: 10.1590/1807-3107bor-2018.vol32.0030
  • 5. García-Sanz V, et al. Non-Surgical Management of the Gingival Smile with Botulinum Toxin A—A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2023;12(4):1433. DOI: 10.3390/jcm12041433

**この記事の要約**

ガミースマイルとは?その定義と主な原因

笑った時に歯茎が過剰に見えてしまう状態を「ガミースマイル」と呼びます。ガミースマイルの原因は単一ではなく、骨格、歯や歯茎、そして口唇の筋肉の働きなど、複数の要素が複雑に絡み合って生じます。根本的な改善を目指すためには、まずご自身のガミースマイルがどのタイプに属するのかを正確に診断することが最も重要です。 多くの方が「歯茎が出ているから歯茎を切れば治る」と誤解されがちですが、実際には骨格的な問題が潜んでいるケースが非常に多く見受けられます。特に日本人は骨格的に上顎が前方に突出したり、縦方向に長く成長しやすい傾向があるため、ガミースマイルの原因として骨格的な要因が占める割合が高いと言われています。そのため、表面的な対症療法ではなく、精密検査に基づいた根本的な原因究明が、治療を成功に導く第一歩となります。

ガミースマイルの3大原因分類

ガミースマイルの原因は、大きく以下の3つに分類されます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

1. 骨格的な問題(上顎骨過成長:VME)

上顎の骨が縦方向に長く成長しすぎている状態(Vertical Maxillary Excess: VME)です。この場合、歯や歯茎のサイズが正常であっても、骨格そのものの位置が低いため、笑った時に歯茎が大きく露出してしまいます。重度のガミースマイルの多くは、この骨格的な問題が主な原因となっています。

骨格的な問題が原因の場合、顔全体に対する下顔面(鼻の下から顎先まで)の割合が長く見える「面長」の傾向を伴うことがよくあります。また、安静時(口を閉じている時)でも口が閉じにくく、無理に閉じようとすると顎の先に梅干しのようなシワができる(オトガイ筋の緊張)のも特徴の一つです。このような状態は、単に見た目の問題だけでなく、口呼吸を誘発しやすく、口腔内の乾燥や歯周病のリスクを高めるなど、機能的な問題も引き起こします。

2. 歯・歯茎の問題

歯の萌出(生えてくること)が不十分で歯冠(歯の頭の部分)が短く見える場合や、歯茎が歯に覆い被さるように過剰に発達している場合です。骨格に問題がなくても、歯と歯茎のバランスによってガミースマイルが生じます。

具体的には、歯の萌出遅延(Altered Passive Eruption)と呼ばれる状態や、歯肉の肥厚などが挙げられます。歯そのものの長さは正常であるにもかかわらず、歯茎が通常よりも下の方まで覆い被さっているため、相対的に歯が短く見え、笑った時に歯茎の面積が広く見えてしまうのです。このタイプは、骨格的な問題に比べて局所的なアプローチで改善しやすい傾向があります。

3. 口唇の筋肉の問題

笑う時に上唇を引き上げる筋肉(上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、大頬骨筋など)の力が強すぎる、あるいは上唇そのものが短い場合です。安静時には問題がなくても、笑った瞬間に上唇が過剰に引き上がってしまい、歯茎が露出します。

筋肉の過緊張が原因の場合、笑った時の上唇の上がり幅が通常よりも大きくなります。また、上唇の縦の長さが短い(ショートリップ)場合も、少し笑っただけで歯茎が見えやすくなります。これらの軟組織(筋肉や皮膚)の問題は、骨格や歯に問題がない場合でも単独でガミースマイルを引き起こす原因となります。

原因別の治療法:ボトックスから骨切り術まで

ガミースマイルの原因に応じて、適切な治療法は異なります。原因を誤って治療を選択すると、十分な効果が得られなかったり、後戻りしてしまったりするリスクがあります。以下の表に、原因別の主な治療法をまとめました。

原因の分類主な状態・特徴適応となる主な治療法根本治療の可否
骨格(上顎骨過成長/VME)上顎の骨が縦に長い、顔の下半分が長く見える顎矯正手術(Le Fort I型骨切り術など)、歯科矯正治療根本治療が可能
歯・歯茎歯が短く見える、歯茎が覆い被さっている歯冠長延長術(クラウンレングスニング)、歯肉切除根本治療が可能
口唇の筋肉笑うと上唇が過剰に引き上がるボトックス注射、上唇粘膜切除術ボトックスは対症療法(数ヶ月で効果消失)

筋肉の過緊張が原因の場合、ボトックス注射は手軽な選択肢となります。注射によって筋肉の働きを一時的に弱めることで、上唇の過剰な引き上がりを抑えます。しかし、効果は数ヶ月程度で消失するため、継続的な施注が必要となる対症療法です。

一方、上顎骨過成長(VME)が原因の骨格性ガミースマイルに対しては、Le Fort I(ルフォーI型)骨切り術などの外科的アプローチ(顎矯正手術)と歯科矯正治療を組み合わせることで、根本治療が可能となります。上顎の骨を適切な位置に移動させることで、ガミースマイルを劇的に改善するだけでなく、機能的な咬合(噛み合わせ)の獲得と、顔全体のバランスの調和を同時に達成することができます。

ミライズ顎変形症クリニックの治療実績とアプローチ

当院では、患者さん第一の視点に立ち、見た目の改善だけでなく「機能的な咬合の確立」を最重要視しています。ガミースマイルの背景には、噛み合わせの不良や顎関節への負担が隠れていることが少なくありません。見た目だけを治しても、噛み合わせが悪ければ、将来的に歯を失うリスクや顎関節症のリスクが高まってしまいます。 ミライズ顎変形症クリニックは、矯正歯科と口腔外科の両方で日本顎変形症学会認定医を擁する全国唯一の民間施設です。私、富田大介(東京都民間クリニック唯一の日本顎変形症学会認定医・矯正歯科)と、君塚幸子(日本口腔外科学会認定医・指導医)、そして名誉顧問・医学博士の大村進が緊密に連携し、大学病院レベルの高度なチーム医療を提供しています。 これまでの顎矯正手術の症例数は143例に上り、患者さんの術後満足度は8.9/10と非常に高い評価をいただいております。また、当院独自の低侵襲サージェリーファーストアプローチにより、術後のダウンタイムを大幅に短縮。社会復帰までの期間が1週間未満の患者さんが63%以上を占め、重篤合併症は0件という安全性の高い治療を実現しています。忙しい社会人の方でも、安心して根本治療に踏み切れる環境を整えています。

治療におけるリスクと副作用

医療広告ガイドラインに基づき、治療に伴うリスクや副作用についても正しくお伝えします。すべての医療行為には、メリットだけでなく必ずリスクが存在します。 顎矯正手術(骨切り術)は全身麻酔下で行われる外科手術であり、術後の腫れ、痛み、一時的な知覚異常(しびれ)、後戻りのリスクが存在します。特に下顎の神経に近い部位を手術する場合、下唇やオトガイ部にしびれが残る可能性がありますが、多くは時間経過とともに回復します。また、歯科矯正治療においては、歯根吸収や歯肉退縮、治療中の虫歯・歯周病リスクなどが伴います。ボトックス注射においても、表情の不自然さや内出血、左右差が生じるリスクがあります。 当院では、術前の3D-CTやセファログラムを用いた精密検査、シミュレーションソフトによる綿密な計画立案、そして十分なカウンセリングを通じて、これらのリスクを最小限に抑えるよう最大限の努力を行っています。

まとめ:根本的な原因解決に向けて

ガミースマイルの原因は多岐にわたり、自己判断で適切な治療法を見つけることは困難です。特に骨格的な要因(上顎骨過成長)が疑われる場合は、専門医による正確な診断と、それに基づいた包括的な治療計画が不可欠です。

「笑う時に口元を手で隠してしまう」「写真に写るのが苦手」といったお悩みを抱えている方は、決して一人で悩まず、まずは専門の医療機関でご自身の状態を正しく把握することから始めてみてください。適切な診断と治療によって、自信に満ちた自然な笑顔と、一生涯健康に噛める機能的な噛み合わせを手に入れることが可能です。

著者情報

  • 執筆・監修: 富田大介(ミライズ顎変形症クリニック 統括院長 / 日本顎変形症学会認定医・矯正歯科)
  • 査読: 君塚幸子(日本口腔外科学会認定医・指導医)
  • 公開日: 2026-04-23
  • 更新日: 2026-04-23

参考文献

  1. Tomaz AFG, et al. Impact of orthognathic surgery on the treatment of gummy smile: an integrative review. Oral Maxillofac Surg. 2020;24(6):1-6. DOI: 10.1007/s10006-020-00857-4
  2. Wu H, et al. Surgical Management for Vertical Maxillary Excess. Oral Maxillofac Surg Clin North Am. 2023;35(1):37-48. DOI: 10.1016/j.coms.2022.06.012
  3. Khojasteh A, Mohaghegh S. Orthognathic surgery for management of gummy smile. Dent Clin North Am. 2022;66(3):385-398. DOI: 10.1016/j.cden.2022.02.003
  4. Chagas TF, et al. Duration of effectiveness of Botulinum toxin type A in excessive gingival display: a systematic review and meta-analysis. Braz Oral Res. 2018;32:e30. DOI: 10.1590/1807-3107bor-2018.vol32.0030
  5. García-Sanz V, et al. Non-Surgical Management of the Gingival Smile with Botulinum Toxin A—A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2023;12(4):1433. DOI: 10.3390/jcm12041433

関連FAQ

Q1. ガミースマイルの原因は遺伝しますか? A1. 骨格的な特徴(上顎骨過成長など)や歯の大きさ、筋肉のつき方などは遺伝的な要因が影響することがあります。ご両親のどちらかがガミースマイルの場合、お子様にも似た骨格的特徴が現れる可能性はあります。しかし、後天的な習癖(口呼吸や指しゃぶり、舌の癖など)が原因となって骨格の成長に悪影響を及ぼすケースもあるため、一概に遺伝だけが原因とは言えません。幼少期からの適切な習癖管理も重要です。

Q2. ボトックス注射でガミースマイルは完全に治りますか? A2. ボトックス注射は、口唇を引き上げる筋肉の働きを弱めることでガミースマイルを目立たなくする対症療法です。効果は数ヶ月程度で消失するため、根本的な治療ではなく、継続的な施注が必要となります。また、骨格的な問題(VME)が主な原因である場合、ボトックス注射だけでは十分な改善が見込めないことが多く、無理に筋肉の動きを止めると不自然な笑顔になるリスクもあります。

Q3. 骨格が原因のガミースマイルは手術なしで治せますか? A3. 軽度であれば歯科矯正治療(歯科矯正用アンカースクリューを用いた上顎前歯の圧下など)で改善可能な場合もあります。しかし、中等度から重度の上顎骨過成長(VME)が原因の場合、根本的な改善にはLe Fort I型骨切り術などの外科的アプローチが必要となることが一般的です。無理に矯正治療だけで治そうとすると、歯の根が短くなる(歯根吸収)などのリスクが高まるため、正確な診断が不可欠です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。 治療の適応や詳細については、必ず専門医にご相談ください。 治療期間・費用・リスク・副作用は症例により異なります。

この記事の執筆者

富田 大介

富田 大介(とみた だいすけ)

ミライズウェルメディカルグループ 代表・統括院長 / 矯正歯科医

日本矯正歯科学会認定医・代議員日本顎変形症学会認定医(矯正歯科)

昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(現・東京科学大学)咬合機能矯正学分野修了。ミライズウェルメディカルグループ代表・統括院長として外科矯正の矯正歯科側治療計画を専門とし、Surgery First・Early Surgeryの豊富な臨床経験を有する。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)でデジタル矯正歯科学の教育にも携わる。口腔外科専門医との23年間に及ぶ連携歴に基づく精密な治療計画の立案と、デジタルワークフローシステムの構築を主導。

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この記事の査読者

君塚 幸子

君塚 幸子

口腔外科医 / 日本顎変形症学会認定医・指導医

日本口腔外科学会認定医・専門医・指導医日本顎変形症学会認定医(口腔外科)

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